人為的風化促進の長期影響評価の為の先端宇宙線生成核種による地球表層環境変動研究
【研究キーワード】
古気候 / 古海洋 / 風化 / 侵食 / 氷期間氷期 / 加速器質量分析
【研究成果の概要】
初年度に開発した、風化堆積物の定量的変動を示すことが可能なベリリウムの同位体のうち、誘導プラズマ質量分析装置を用いた、高感度のベリリウム安定同位体測定を行うことで、過去の気候および環境変化と風化侵食のシグナルがどのように保存されているかについての研究を進めた。特に氷期から現在の間氷期にいたった今でも、大規模な氷床が存在する南極大陸の現在は氷床が覆っていない露岩域と呼ばれる部分に着目した。最終氷期から現在にかけて、気候の温暖化と海水準の上昇、それに伴う氷床の融解などが起こっている。特に氷床は流動する際に基盤の岩石を削はくしている。露岩域ではかつて氷床が存在していた部分に、取り残された形での湖が存在しているため、この堆積物を用いることで、融解のタイミングなどについて議論を行うことができるデータの確保が期待された。今回は東南極の湖の堆積物についてベリリウムの同位体を分析した。すると、この地域の氷床の融解のタイミングは、北半球氷床のの融解から10,000年以上遅れてスタートしたことが明らかになった。またベリリウムの同位体からは、融解当初は風化起源のシグナルが残されているものの、その後、融解水の影響によるベリリウム同位体のエクスカーションがおよそ4,000年前に起こっていたことが明らかになった。特にこのタイミングは、海洋の循環パタンが変化したタイミングとして先行研究でも報告されているタイミングであり、沿岸地域への温暖な海流が侵入したことが原因と考えられた。海洋と氷床の変化について陸域の湖沼堆積物を用いることで関係性が明らかになった。これらについては論文が国際誌に掲載された。また、初年度に導入した堆積物のガンマ線を検出し、より最近の年代測定を行う分析装置の立ち上げも順調に行い、陸域のコアトップの年代測定に適用するべく調整を進めた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
大河内 直彦 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 | 海洋機能利用部門 | 部門長 | (Kakenデータベース) |
Obrochta Stephen | 秋田大学 | 国際資源学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】46,020千円 (直接経費: 35,400千円、間接経費: 10,620千円)