反応依存性理論を用いたカント的実在論の展開
【研究キーワード】
カント / 形而上学 / 認識論 / 超越論的観念論 / 実在論 / 反応依存性 / 国際共同研究
【研究成果の概要】
2021年度は、Lucy AllaisとTobias Rosefeldtの解釈方針の検討を進めるとともに、「反応依存性」概念そのものについての現在の研究状況の把握に努めた。
Allaisの解釈はカントの「超越論的観念論」により強健(robust)な実在論を帰することになるが、とりわけ『純粋理性批判』の「純粋理性のアンチノミー」の解釈に際して重大な困難を持つ、という結論に達した。また、第一版「第四パラロギスムス」とも非常に相性が悪い。ただし、おそらくAllaisはこの点を自らの解釈の欠点とはみなさないだろう。彼女の解釈は、カント理論哲学全体とは斉合しないとしても、「超越論的分析論」までの箇所に対しては上首尾な理解を与えることは事実であり、本研究が目指す「カント的実在論」の有力な候補となる、というのが目下の結論である。
それに対して、Rosefeldtの解釈が「超越論的観念論」に帰する立場は、「実在論」と呼ぶには弱すぎる立場となってしまうとの暫定的結論が得られた。それはおそらく、彼が明示的に拒否する「現象主義」と大差ない立場になってしまうと思われる。Rosefeldtがこのことに気づいていないというのは考えにくいので、彼の解釈立場はさらに検討が必要であると思われる。
「反応依存性」概念そのものの研究に関しては、特に今日の反応依存性理論の代表的な二種であるJohnston型とPettit型の相違を明らかにすることに努めた。このテーマについての研究に関してはまだ端緒に着いたばかりであり、本格的な研究は2022年度に引き継がれることとなる。
また、本研究課題に関して、国内研究者を招聘して公開研究会を行なう予定であったが、新型コロナウィルス対策の継続により、実現できなかった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)