脱植民地化諸地域における政治と思想日本植民地主義と西欧植民地主義の比較と国際環境
【研究分野】地域研究
【研究キーワード】
脱植民地化 / 植民地 / 植民地主義 / 脱帝国化 / 冷戦 / 民主化 / ナショナリズム / 経済発展 / 植民地化 / 帝国
【研究成果の概要】
本研究の主要な成果は、西欧の事例との比較と国際環境との関連において考察することにより、東アジアの脱植民地化に関して、新たな知見が得られたことである。主なものは次のように要約できる。
第一に、東アジアの脱植民地化は、日本植民地帝国の敗戦から直接に帰結したことによって、また脱植民地化の初期に東西冷戦が急速にこの地域に波及したことによって、次のような特徴を有した。
(1)脱帝国化した日本と脱植民地化した旧植民地との新たな国家間関係の樹立は、米国の冷戦戦略上の考慮に強く影響された。
(2)旧植民地において戦後秩序の最初の担い手となったのは、植民地支配を実際に経験した民衆を代表する勢力ではなく、対日戦争勝利者を代表する占領者であったため、これらの地域における脱植民地化は、多かれ少なかれこれら占領者により「代行された」側面をもった。
(3)こうした事情のため、旧植民地における植民地的遺制の解決とそれを通じた日本と旧植民地地域住民との和解は、不徹底な部分を残した。
第二に、冷戦終結後、東アジアでもグローバル化の波及による各国の経済的相互依存が深まる一方で、相互に不寛容な大衆ナショナリズムの高まりの兆しがある。これには、前記の脱植民地化の不徹底が影響しているものと考えられる。このため、東アジア諸民族関係においては、「魂の脱植民地化」とも称すべき心理過程の研究が必要となっており、この点で、ガンディーやファノンといった西欧植民地主義と対峙してきた思想家の業績が再検討される必要がある。
【研究代表者】