エジプト、北サッカラ遺跡における新王国時代墓地の総合的調査研究
【研究キーワード】
エジプト / 考古学 / サッカラ遺跡 / ローマ支配時代 / 新王国時代 / 埋葬 / 古代エジプト / ローマ支配期 / カタコンベ / 埋葬習慣 / 来世観 / サッカラ / 墓地
【研究成果の概要】
古代エジプト新王国時代の北の中心地であったメンフィスの墓地であるサッカラについては、その重要性にも関わらず、これまで網羅的な調査が実施されてこなかった。サッカラにおいて新王国時代の墓を新たに発見、調査することにより、これまで南の中心地テーベに偏重してきた新王国時代史の再構築が期待される。このような問題意識のもと、2015年度から科学研究費補助金・基盤研究(B)の助成を受け、踏査と試掘を行い、本科学研究費により本格的な発掘調査を開始した。
2019年度の調査は、8月から9月までの2ヶ月間実施した。調査地はサッカラ北部の台地の東側斜面であり、既に同年3月に調査を行った場所に隣接する部分である。2019年3月の調査にて岩窟墓の入口の一部が確認され、調査を実施したところ、当初想定していた新王国時代の岩窟墓ではなく、紀元後1世紀頃のローマ支配期のカタコンベ(地下集団墓地)」であることが判明した。
カタコンベは、日干レンガ製のヴォールト天井に覆われた長さ約9メートル、幅1.5メートルの下降階段と奥行き約15メートル、幅約2.5メートルの通廊の両側壁に合わせて5つの側室を持つ岩窟墓から構成されていた。これまでローマ支配期のカタコンベについては、地中海沿岸のギリシア・ローマ時代のエジプトの首都であるアレクサンドリアで知られていたが、ナイル川流域では初めての発見である。岩窟墓内部には数十体のミイラを含めた遺体がほぼ手付かずの状態で埋葬されていた。さらに、エジプトの神々とギリシア・ローマ風の人物が描かれたギリシア文字が掘られた石碑や、エジプトのイシス女神とギリシアのアフロディーテ女神が習合したイシス・アフロディーテ女神の像などが複数体出土した。
本調査による発見は、世界的に報道され、エジプトのローマ支配期の埋葬習慣や来世観を提供する重要な成果として学界に注目されている。
【研究代表者】