「映像」に基づく人類学の構築-映像的/理論的パースペクティブの研究
【研究分野】文化人類学・民俗学
【研究キーワード】
人類学 / 映像 / ペースペクティブ / 社会 / イメージ / 文化人類学 / 社会学 / 理論 / パースペクティブ
【研究成果の概要】
本研究の目的は野心的なものであり、映像による民族誌現実の把握・分析・表現が、言葉によって実践されてきたメインストリームの人類学とどのように交差し、それをどのように補完し更新しうるかを、根本的に再考することであった。
そこでの一群の問題のうち、映像の主に視覚的イメージに関する部分については、学会誌『文化人類学』への投稿論文によって、その本質的な部分を整理しえたと考える。このほか、単行本『フェティシズム研究の系譜と展望』(田中雅一編)への寄稿論文では、言葉での把握が非常に困難な、映像の物質的部分が提起する問題について、人類学・映画・思想とを横断しつつ論じた。また雑誌『思想』への寄稿論文では、従来は言語的な側面が強調されてきたレヴィ=ストロースの人類学におけるイメージ性の問題を、根本的に再評価することを試みた。
この最後の点とも関わるが、今年度の研究で重視した課題は、民族誌映像における言葉の問題である。これに関しては、昨年夏から、F・ワイズマンのドキュメンタリー映画に焦点を絞って集中的な考察を続けている。その成果は現段階では未発表だが、広義での自然法思想を参照しつつ、映像における言葉の問題のみならず、法や制度をめぐる現代社会の人類学一般についても新しい展望を得る方向に発展しつつある。
他方、実践的な側面では、3月にバルセロナ市で都市景観を主題とした映像撮影を行った。年度未の作業であったため、資料の検討、作品化、考察といった作業はまだ着手したばかりだが、今後、作業を完遂する予定である。その中で、昨年度の研究の中で前面化してきた「人々」のパースペクティブの問題も(本年度中は十分に展開することができなかったが)、検討していきたいと考える。
以上のように、「映像」に基づく新しい人類学の基礎を築くことを課題とした本研究は、未来完了的な部分を含みつつ、十二分に達成されつつあると自己評価している。
【研究代表者】
【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2007 - 2008
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)