AI時代のリテラシー育成をめざすケース教育プログラムの整備と体系化
【研究キーワード】
AI倫理 / AIリテラシー / 科学コミュニケーション / 技術教育 / 技術者倫理 / ケースメソッド / ケース教材 / 科学教育 / 人工知能 / 社会情報学 / ケーススタディ
【研究成果の概要】
本年度は,昨年度の研究を発展的に拡張し,大学院生(理系)に加え学部生(B2以上)を対象にAI倫理教育のためのケース教育を実践し,その効果や特徴を明らかにした.教案を作成し教場で実践評価したリーディングケースは,自動運転車による事故,オンライン試験監督システムの導入,美術品のデジタル復元プロジェクトの3ケースである.これらはいずれも,昨年度の研究において設計・執筆したケース教材であり,それぞれAI倫理を代表するトピックを扱っている.
教育における実践では,教室(一部オンライン)でのケース討議に加え,学習支援システム(LMS)を活用したワークショップ形式とし,定量的・定性的(質的)な評価枠組みを超え,ケース分析活動,ピアレビューとディスカッション活動を組合せるかたちで行った.また,ケース教育前後で,アンケートを実施した.ケース教育を実践した結果,昨年と同様に,ケースにより差はあるものの,倫理的側面の意識と広範な気づきを導出でき,新たに生じる技術やリスクへの理解の深まりがみられた.特に本年度,AI実用化時代の新たなリスク認知・倫理的課題を扱う教育へのアプローチが叶ったことは,大きな意義があった.
特に,教室でのケース教育の実践では,倫理的なコンセンサスを要する問題に対する,学生の考え方の変容を確認することができた.学生らはケース教育を通じて,AI倫理に関心を高める傾向にある.同時に,技術の優位性を改めて確信する一方で,技術のリスクを理解し,同時に慎重さも把握するに至った.更に,倫理的に偏った学生の指向は緩和され,技術の普及に対してやや保守的な意見を抱きつつも,その重要性の理解が堅持されたことを,ケース前後のアンケートから明らかにすることができた.2022年度は引き続き,AI倫理を巡る多様な問題を扱うケース教材を蓄積し,教場での実践を通じて評価すると共に,体系化へとその幅を広げる.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)