近代博物誌の成立と展開-テクストと図版からの接近
【研究分野】ヨーロッパ語系文学
【研究キーワード】
博物誌 / 分類 / 連鎖 / 図版 / 版画 / 百科全書 / 自然 / 大旅行 / 博物図鑑 / 銅版画 / 大航海 / アーカイヴ / 科学
【研究成果の概要】
本研究は、それまで長期にわたり黙殺され続けてきた博物誌が、古代記憶術や『百科全書』との関わりにおいて人々に注目され、ついには18世紀に学問の仲間入りを果たすにいたる経過を辿って、その本質を解明しようと試みるものである。
研究は以下の4つの角度からなされる。
1)思想システムの解明。
「もの」や「存在」の全領域についてのカタログ化という試みは、ヨーロッパ思想史に根強い伝統を築いている「古代記憶術」に淵源をもつ。ビュフォンやディドロらが自然や世界を「地図」、「樹木」あるいは「ネットワーク」の比喩で捉えようとしたことに光を当て、記憶術が17世紀の新哲学(デカルト、ベーコン、ライプニッツ)の中で、新しい「知」の編制技法として蘇り、それが啓蒙時代の『百科全書』や博物誌といった巨大な集成へと進化するプロセスが跡づけられる。
2)間テクスト性の解明。
間テクスト性はおそらく啓蒙主義最重要の観念である。博物誌を同時代の文化、とりわけ『百科全書』との相互影響関係で位置づけ、当時の事典や博物書を特徴づける「コピー」、「引用」、「剽窃」、「焼き直し」といった問題と関連づけて論じる。
3)生成過程の解明。
ここでは画像付きの博物図鑑を、18世紀独特の視覚革命という見地から取り上げて論じる。英国やフランスにおける版画の隆盛は、この視覚革命と不可分であり、またそうした中で博物図版が果たした、自然の多様性、個別性を認識させる教育装置としての無視できない役割にも光を当てる。
4)影響関係の解明。生物学の誕生、写真術の発明などで、19世紀半ばに衰退の兆しを見せ始める博物誌の歴史的意味づけと、後生への影響の諸相を論じる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】3,000千円 (直接経費: 3,000千円)