頭蓋骨解剖学体系の枠組みから外れた未知の新奇形質「耳舌骨」の多角的解明
【研究キーワード】
進化 / 舌骨 / 耳 / 比較解剖学
【研究成果の概要】
本研究では従来の解剖学体系では記載されてこなかった骨、「耳舌骨」について多角的に研究を行なった。動物系統X(論文発表後に公表)のなかで発見した「耳舌骨」はXの中で完全に硬骨化した骨を持つXaと、成体でも軟骨のままであるXb系統がいることを突き止めた。胎児期サンプルを用いて発生学的観察を行なったところ、作業仮説は否定される結果となった。当初は舌骨の原基であるライヘルト軟骨の外側端が分離し、骨化することで耳舌骨へと分化するとの仮説を立てていたが、耳介軟骨の腹側基部が骨化したものであることがわかった。遺伝子発現を解析したところ、BMP、FGF、Sox9の動態に大きく関与していることが判明した。
【研究の社会的意義】
頭蓋骨進化は無数の解剖学者が研究を行ってきたが、哺乳類の頭蓋骨において新奇な骨はこれまで発見されていなかった。現在論文の完成に向けて準備を進めているところであるが、この論文が発表に至れば、耳舌骨は哺乳類の頭蓋骨において唯一知られる新奇骨として解剖学体系に書き加えられることとなる。またヒトでは遺伝子変異を原因として茎状舌骨靭帯が化骨し,嚥下困難を引き起こすEagle症候群という疾患がある。耳舌骨の形成にはBMP、FGF、Sox9、Col6a1の発現が特に関わっていることから、この病態においてもこれらの遺伝子の変異が関与している可能性が考えられ、治療について基礎知見となりうると考えられる。
【研究代表者】