後生動物の付属肢の起源を探る:交尾器起源説の検証
【研究キーワード】
珍無腸動物門 / 左右相称動物 / 交尾器 / 繁殖様式 / 無性生殖 / 有性生殖 / 体内受精 / 付属肢 / 珍無腸動物 / 雄性生殖器 / パターニング遺伝子 / 突出部委
【研究成果の概要】
本研究課題では、珍無腸動物門における繁殖様式に焦点を当て、左右相称動物においていかにして繁殖の様式が進化してきたのかについて新たな洞察を得ることを目的とする。主として用いる研究対象はミサキムチョウウズムシであり、本年度はトランスクリプトームデータから遺伝子カタログを作成し、付属肢の発生に重要とされる遺伝子の同定に成功している。また、成長に伴う交尾器の発達過程についても精査しており、雄性先熟であることが示唆されている。今後は、in situ ハイブリダイゼーションなどにより、交尾器の発達に必要な遺伝子がどのように発現しているのかについて詳細な解析を行う。
また、特殊な無性生殖を行う無腸動物 Convolutriloba longifissuraについても大きな成果が得られた。本種は飼育条件下では主として分裂を行うことで増殖するが、横分裂と縦分裂を組み合わせた特異な分裂様式を呈する。この特殊な分裂がどのように制御されているのかを知るため、分裂過程の詳細なステージングと切断実験を行った。その結果、横分裂が適切な位置に入ることで、縦分裂が誘導されていることが示唆された。また、比較トランスクリプトーム解析によって、縦分裂の分子発生機構を解明することを試みた。面白いことに、駆動されることが予想されたアポトーシスは縦分裂には使われておらず、分裂と並行して2つの頭部再生が起こることで、2つの頭部が独自に運動を開始することで、中央部分の亀裂が大きくなることが示唆されている。今後はこれまでの成果を論文としてまとめるとともに、発現上昇が認められた正中線の規定に関する遺伝子の発現局在をin situ ハイブリダイゼーションなどにより、特定する予定である。
本年度に導入された臨界点乾燥装置によりサンプルを処理することで、走査電子顕微鏡での交尾器の微細構造などの解析が詳細に行えるようになった。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2021-07-09 - 2026-03-31
【配分額】26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)