国際援助におけるオルタナティヴな開発の後退:先住民性からのアプローチ
【研究キーワード】
ラテンアメリカ / 先住民 / 開発 / SDGs / FILAC / オルタナティブな開発 / 援助
【研究成果の概要】
2020年度に引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた現地調査は全く実施できなかった。これに伴い、これまでに入手してきた文書を元に、先住民組織がSDGsをはじめとする開発目標に自らの目標を当てはめていく過程に着目し、強力な先住民組織を擁するボリビアとエクアドルを中心に、調査を進めた。
現時点で明らかになっていることは2つある。第一に、各国の先住民組織は、開発の主流となる言説に沿って自らの組織目標を説明する姿勢を必ずしも徹底していない。SDGsのようなユニバーサルな言説は先住民固有の価値を唱えたい先住民組織にとっては取り込みにくいことが理由として考えられる。例えば、エクアドルでは政府の開発目標として「よく生きること (Buen Vivir)」なる概念が提唱され、それはSDGsに関連する政府の開発計画において測定可能な開発目標として具体化されている。しかし、同国最大の先住民団体であるCONAIEは政府のこうした対応に同意していない。経済成長と環境保全の双方のバランスを重視するSDGsや政府の言う「よく生きること」は、先住民団体の強く求める環境保全重視の姿勢とは相容れないところがあり、CONAIEはマクロな量的指標ではなく、特定地域の鉱山開発の中止など個別具体的なレベルで開発に関する成果を追求している。
第二に、FILACをはじめとする国際組織では、基本的にはSDGsの各項目に沿った形で先住民の開発目標を再定義することがなされている。一方、SDGsの発表前後において、SDGsに関する不満がFILACでの会合にて一部の先住民組織から出されたことも確認できた。これもまた、SDGsが持つ普遍的かつ量的なアプローチに対する批判の1つと言える。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)