複数インフラ形態の数理最適配置による低炭素モビリティの時空間ビジョン
【研究キーワード】
低炭素モビリティ / 電気自動車 / インフラ配置 / 数理最適化 / 時空間分析
【研究成果の概要】
本研究では複数インフラ形態の数理最適配置による低炭素モビリティの時空間ビジョンを描き出すべく,静的⇔動的という時間スケールの差異,近隣需要⇔広域需要という空間スケールの差異の双方を明示的に導入した議論を展開している,そのための着眼点としては,A)数理最適化モデルの構築と,B)実データに基づく具体的検証を設定しているが,本年度は特に基本モデルの確立を意識し,「静的×広域需要の時空間スケールに基づく解析」を中心に実施した.これは,EV普及台数が変化しない静的な状況を想定し,主にインフラ量と利便性との定量的関係に着目した解析と解釈することができる.
A)まず,数理最適化モデルの観点から,複数インフラの最適配置に関する基本モデルを構築した.スタンド充電に関するインフラ最適配置モデルは多数提案されている一方で,それ以外の給電形態を明示的に考慮したインフラ最適配置の先行研究は決して多くない.本年度は,バッテリー状態の連続的変化を変数に導入し,スタンド充電に限らない複数給電形態を考慮した同時最適配置モデルを,混合整数計画法に基づき構築した.
B)その上で,実データに基づく具体的検証も行うべく,提案モデルを全国高速道路ネットワークおよび旅客・貨物流動調査等の大規模地理情報データに基づき検証した.物流分野での採算性検討のため,貨物トラックを想定したパラメータと物流ODによる検証も行い,様々な普及率の想定での経済合理性を確認した.その意図としては,ガソリン車に対するEVの優位性が希薄であることが挙げられる.EVの優位性は,車両価格や維持費用といった経済性と実際の移動における利便性によって決定されるが,その双方の鍵を握るのがEVへ電力供給するためのインフラ整備である.インフラの整備水準が,移動の利便性に直結することはもちろんであるが,給電代金などに応じて,経済性も大きく影響を受けることを確認した.
【研究代表者】