福祉国家システムの経済安定・危機管理機能についての国際比較研究
【研究分野】財政学・金融論
【研究キーワード】
福祉国家システム / 途上国 / 年金 / 住宅 / 預金保険 / パブリック・セクター / 公的部門 / リスク
【研究成果の概要】
本研究では、福祉国家システムを広く市場メカニズムだけでは達成が不可能な資源・所得の再分配を通じた経済安定機構・危機管理機構ととらえ、伝統的な社会保障、年金、医療制度に加えて、住宅、教育、コミュニティ開発、さらには預金保険制度を含む領域における公的部門、民間部門、両部門のリスク負担状況を検討してきた。特に本研究では、市場メカニズムの福祉国家システムへの浸透が著しいと考えられ、公的部門の関与の仕方が、財政支出や補助金といった直接的な所得移転形態から、全体として金融的保証活動にシフトする傾向が顕在化する傾向を示している年金給付保証、住宅金融保証、奨学ローン保証、あるいは預金保険・保証などの領域を取り上げた。そしてこれらの領域について、日米ヨーロッパ比較を中心しながら、アジアを中心とする発展途上国の同領域の特質についても視野に入れて検討をすすめてきた。
上記の論点について、研究対象となった全ての領域で明確な傾向が現れているわけではないが、また研究分担者の間で明確な合意が形成されているわけではないが、少なくとも住宅金融の領域での日米比較の結果は、公的部門が間接的な介入形態にシフトするに従って、所得再分配の対象が、勤労者、学生、あるいは零細貯蓄者といった本来の所得分配対象者から、関連企業、金融機関への所得再分配傾向を強め、また市場変動に追随する形で関連プログラムが大きく変化したり、突如として巨額の財政負担を発生させるという問題を抱えているという知見を得ている。またこの種の検討内容については、今年度の研究参加者の研究発表論文に見ることができる。
【研究代表者】