中華民国期北京における読書様態と読者層の構造-同郷共同体を視座として-
【研究分野】中国語・中国文学
【研究キーワード】
中華民国 / 北京 / 読書 / 読書サークル / 読者層 / 同郷組織 / 共同体
【研究成果の概要】
1.『京報副刊』(複製)を入手し、その総目次をデータベース化した(筆者索引も作成)。公刊は来年度になる予定だが、これにより、従来日本では完全な形で見ることのできなかった『京報副刊』の利用が格段に便利になり、民国期北京の研究に貢献するところは大きいと確信している。
2.工読互助団と胡適〈イプセン主義〉との関わりの検討から、共同生活を営みながら文学を読み書く青年結社(いわば読者共同体)において、伝統的な同郷的紐帯が根強く関与している点と、同時に、その枠には収まりきらない新しい人的結合が積極的に利用されている点が明らかになった。こうした広い視野から、特に文学と恋愛との聯関に焦点を当てた考察を、論文(裏面参照)にまとめた。
3.民国期北京の学生層を中心とする文学結社等における読書生活を調査し、特に会館・公寓といった同郷組織に関する資料を系統的に収集した。その過程で、学校便覧『北京民国大学十周年記念冊』の学生名簿をデータベース化することにより、学生の寄宿舎において同郷的紐帯が重要な行動原理となってたことが鮮明に浮かび上がってきた。これは近代的読書空間の出現が、個人的契機のみならず、社会的要因とも相関するという、重層的・複合的な分析枠組みの検討につながるものであり、今後の研究に一定の方向性を与えるものである。
4.以上、集団的な場において遂行される読書行為の様態について、特に同郷的共同性のレベルに注目しつつ、読書と人的結合との聯関に関わる複雑な要因を解明していくことの重要性を認識させられ、社会文化史的レベルを含めた広い視野からの分析の礎石が固められた。今後の研究課題として、こうした視点を、より多くの資料を用いて検証していくことを期したい。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1995
【配分額】1,000千円 (直接経費: 1,000千円)