仮想将来世代による新しい市民討議手法の開発と効果測定-将来人の思考プロセスは何か
【研究キーワード】
フューチャー・デザイン / 市民討議 / 経済実験 / 時間選好 / リスク選好 / 社会調査 / 実験経済学 / 実験 / 仮想将来世代 / 社会志向性
【研究成果の概要】
本研究は、「仮想将来世代」を政策形成・合意過程に導入する(=フューチャー・デザイン,以下FD)ことで、未来を視野に入れた長期的かつ俯瞰的な視点に基づく合意形成の具体的手法を領域横断的に開発し、その効果を科学的に検証することを目的とする。持続可能性に関わる地域課題の特徴は,個人(短期)と社会(長期)が利益相反するため政策合意形成に至らず停滞することが多い。その問題に、FD思考に焦点を合わせ解決の突破口を提供する。
2021年度ではコロナ禍の中,長野県松本市,佐久穂町,朝日村の3つの基礎自治体において,FDによる市民討議をそれぞれに開催し,(1)市民参加型討議(WS)における提供情報の種類と質を検討し,「仮想将来世代」に誘う主だった効果的手法構造を特定した。そして,(2)行政担当者や研究者の恣意的介在を極小にすべく,市民によって言語化されたワーク内容を直接政策形成に結びつける討議スタイル及び討議言語を模索し,一定の成果を見た。(3)参加市民は,FDを伴わない政策討議結果とFDを伴った政策討議の両方を体験し,自らの言葉で両者を対比した結果から,両者間に十分な差異を検出した。(4)FDWSの体験の前後で,参加市民の時間的視野の長短が変化し,それが自他の利害相反を克服する社会的俯瞰思考と連動していることをアンケートデータによって統計的に特定した。さらに,将来リスクをとって将来に向けて投資することに対する耐性と,時間的・社会的俯瞰思考との連動性も確認した。(3)(4)で得た知見を論文にまとめ信州大学紀要に掲載した。また,英語論文にまとめ,国際学術雑誌に投稿する予定である。(5)上記3つの基礎自治体では,市民FDWSの実施だけでなく,職員研修にもFDを導入し,人材育成に貢献した。(6)東京財団主催のFDWSフォーラムに,連携自治体職員と共に参加し,報告・講演等を行った。
【研究代表者】