OR的アプローチによる生産システムの柔軟性に関する研究
【研究分野】社会システム工学
【研究キーワード】
フレキシブル生産システム(FMS) / オペレーションズ・リサーチ(OR) / 柔軟性(flexibility) / スケジューリング / 組合せ最適化 / シミュレーション / ディスパッチング / 経路選択 / ディスパッチング規則 / 待ち行列網 / 投入部品選択問題 / 離散型シミュレーション / シミュレーテッド・アニーリング
【研究成果の概要】
本研究では、FMSに代表される最近の自動生産システムの柔軟性がディスパッチングや最適化といったスケジューリングに及ぼす影響の分析や、機械の柔軟性に伴う工程集約がスケジューリングに及ぼす影響の分析を中心に、生産の計画管理と柔軟性との関係を明らかにした。主な成果は、以下の通りである:
(1)FMSにおけるディスパッチング規則の性能: 柔軟性を有する自動生産システムが持つ、自動搬送装置、有限パレット、有限バッファ、品種ロットの存在等の特徴を念頭に置き、総納期遅れ等のロット関連評価尺度と稼働率等のショップ関連尺度を考慮してディスパッチング規則の性能評価と最適化を行った。その結果、経路選択の自由度がない状況下では、主に、(1)SPT(Shortes Processing Time first)規則のような負荷の小さいジョブを優先的に流す規則が、納期関連評価尺度に関しても良い性能を示すこと、(2)ロットの大きさを考慮に入れた簡単なディスパッチング規則が納期関連評価尺度の改善に大きく役立つこと等が明らかになった。
さらに、経路選択の柔軟性がディスパッチング規則の性能に及ぼす影響を、シミュレーションによって調べた。その結果、経路選択の柔軟性が高まるにつれて、加工時間が短いジョブを優先する規則の相対的優位性が低下することが判明した。このことから、ディスパッチング優先する規則の相対的優先性が低下することが判明した。このことから、ディスパッチング規則の性能が、システムの柔軟性と相互に関連することが明らかになるとともに、従来の規則がシステムの柔軟性を十分に考慮していないことが明らかになった。
(2)柔軟性を生かす"Cooperative Dispatching"の提案と評価: 経路選択の自由度によって得られたシステムの柔軟性を十分に生かすために、Cooperative Dispatchingというフレームワークを構築し、ジョブと機械の協調によって、ジョブの処理機械を決定する方法を提案し、シミュレーションによってその性能を評価した。提案する方法によって、納期遅れ、滞溜時間、稼働率の各評価尺度とも改善されることが分かった。
(3)FMSにけるディスパッチング規則の最適化: 品種(ロット)を明確に意識した「品種(ロット)管理」を採用するフレキシブル生産システム(FMS)を想定し、品種(ロット)の優先順序に基づくディスパッチング規則を考えるとき、評価尺度(納期遅れ)の最適化を図る品種の優先順序決定問題に対してシミュレーテッド・アニーリング法と離散型シミュレーションとを併用したアルゴリズムを構築し、その性能を評価した。
【研究代表者】