意味論を中心に据えたインターフェイスの再構成と日独語の対照可能性
【研究分野】独語・独文学
【研究キーワード】
意味論 / インターフェイス / ダイナミック・シンタックス / 時制,モダル,法 / 関係名詞,所有動詞 / 浮遊量化子 / 脳科学実験 / コンテクスト / ダイナミック・シンタック / 言語記憶 / 談話意味論 / 情報構造 / 前提 / (不)定性 / トピック / フォーカス / 冠詞 / 認知科学 / 形式文法 / 日本語文法 / ドイツ語文法 / 埋め込みと外置
【研究成果の概要】
アスペクト、時制とそれにまつわる名詞句表現の影響に関する研究から出発して、当プロジェクトが開始する頃には我々は形式意味論がいかに実用論と絡み合いながら意味を合成しているかを認識していた。それを理論的に反映させる手段として、日本の統語論者の間に見られるように意味論を消失させていく方向ではなく、意味論を充実させる方向で言語理論の発展を図った。そのためには意味論についての理論的発展が必要があり、もう一方で意味論と実用論の相互干渉について精緻な言語事実の分析が必要であった。
以上に述べた課題を推進するために,本プロジェクトでは、「意味論に通じる統語論」の規定と意味論の世界知識・一般認知処理への接続を同時に目標としての問題として設定した。具体的な言語分析は,情報構造と談話構造に関するもの,スコープと統語構造の関連を探る浮遊量化子に関するもの,関係名詞,所有動詞と(不)定性に関するもの,形態とコンテクストの意味的関連を時制,モダル,法に求めるものなどに分かれる。
統語論と意味論を並行的に説明するために単層文法、とくに範疇文法を検討したが、意味論と実用論の相互干渉したことで、宣言性、語彙性も我々の公準ではなくなった。その代わりに、意味論を動的に捉えていくこと、そしてこの動態性が統語論も巻き込んで成立することを定式化する試みが課題となった。そこでダイナミック・シンタックスを採用し、同時に統語・意味処理のコンテクストとの関連に考察を進めた。文意味の動態性もコンテクストの動態性を走査しながらしか把握できないことがわかったが、問題はこれを意味論で扱うかであろう。
最後に、文法処理に与える記憶や注意の影響を測定する脳科学実験によって,本プロジェクトの中心である「意味論に中心を据えた言語理論」と認知科学との接続可能性を見出すことができたと考える。
【研究代表者】