二十世紀における日本文学・文化とメディアの相互連関を対象とする総合的研究
【研究分野】国文学
【研究キーワード】
東京朝日新聞 / ゴジラ / 藤沢周平 / ジェンダー / 朗読 / 教育 / 文芸春秋 / ジェンダー・フリー / 国語教材 / 文藝春秋 / 森鴎外 / 怪物 / 大菩薩峠 / 絵画 / 宮沢賢治 / 横光利一 / 1920年代 / 国語教育
【研究成果の概要】
本研究は、二十世紀の日本の文学・文化とメディアの問題を、多角的・総合的に検証することを目標とし、二年間にわたる共同研究として企画された。その結果、(1)近代の文学は、これまで、書物や雑誌・新聞といった活版印刷によって流通し、読まれることを前提としてきたが、たとえば雑誌の販売部数や売り上げ高、新聞の配達経路など、その実態をより具体的に検証することの重要性が明らかになったこと、(2)その活版印刷が必ずしも普遍的なものではなく、過渡的なメディアの一形態であり、今日のいわゆる文学の衰退が、活字媒体の衰退と通底していることが確認できたこと、(3)一方、映像表現や朗読など、視覚や聴覚に関わって、活字媒体では切り捨てられてきた言葉の身体性に目を向けることの必要性が認識されたこと、(4)いわゆる大衆文学や怪獣映画など、従来は傍流とされていた分野に、現代の文化現象を把握するためのきわめて大きな手がかりが見いだされたこと、(5)メディアの問題を検証するためにも、研究者自身の差別やジェンダーに関わる意識が問われなければならないことが自覚されたこと、--などがこのたびの大きな収穫であったと考える。
しかし、いうまでもなく、このテーマはきわめて大きく、限られた期間の研究で全てを尽くせるものではない。また当初は、大別して初年度を個別研究、二年目を共同研究という位置づけであったが、テーマの大きさと重要性に鑑みて(それはわれわれのよって立つ研究基盤そのものを問うことであるから)、中途半端な「結論」を導き出すよりも、それぞれの研究テーマをさらに深めることが重要である、という認識で一致し、結果としては今年度も、それぞれの分野で個別の研究を深めることになった点をおことわりしたい。
【研究代表者】