思想表現媒体から捉え直される、人間にとっての「空間」構成の意義についての研究
【研究分野】哲学・倫理学
【研究キーワード】
空間 / 哲学 / 芸術論 / 思想史 / 空間認知 / 空間構成 / 身体論 / 場所 / 世間 / 景観 / 空間知覚 / メディア空間 / 演劇 / 物語
【研究成果の概要】
本研究の目的は、異なる分野の研究者の共同研究によって、人間にとって「空間」のもつ意義を総合的に究明することである。この目的のために、建築、哲学、認知科学などさまざまな分野の研究者を招聘して、公開フォーラム。公開シンポジウムを3回にわたって開催した。その結果、異なる分野の研究の交流が促進され、主として次のような点について、新しい観点に基づく研究の進展が見られた。
1.「見る」という認知が成立するには、他の感覚のはたらきが重要であり、空間認識の解明には、人間の「身体性」の考察が不可欠であること。
『研究成果報告書』においては、城戸淳「カントの空間--身体・開闢・感情」、鈴木光太郎「パークリーの空間の哲学を実験する--モリヌー問題と倒立網膜像問題」および栗原隆「生きられる空間、もしくは世間という体」がこうした論点に基づく研究成果を報告している。
2.空間、は、景観や建築物として、人間の外部において現前しているものであっても、人間にとって、単なる外部環境に留まらず、生きる境地としての意義を担うようになること。
こうした研究の成果は、『研究成果報告書』において、鈴木強秀が「聖所論から見た空間理解に関する予備的考察--古代イスラエル宗教思想からみたエルサレム神殿の意義」として、・山内志朗が「ケルンに眠るドゥンス・スコトゥス--風土と哲学」として、堀竜一が「森鴎外訳『即興詩人』のローマ」として、栗原隆が「秋山郷を読む--景観美学への一試論」として報告している。
3.空間という概念は、単に物理的なものでも感覚的なものでもなく、それぞれの人間において「構成」されるものであり、哲学的、歴史的な背景をもつこと。
『研究成果報告書』においては、佐藤徹郎「無限の空間」、栗原隆「拍子とリズムと空間と」および寄場俊「絵画的平面の破壊--マレーヴィチ論ノート」がこうした観点から、物理学、音楽、絵画における空間に関する研究成果を報告している。
【研究代表者】