社会ゲームの理論と実験:自発的規律付けと多様な戦略の併存の含意と国際比較
【研究分野】理論経済学
【研究キーワード】
ゲーム理論 / 実験 / 社会ゲーム / 協力 / 寛容 / 国際比較 / ミクロ経済学 / 多様性
【研究成果の概要】
理論論文は研究が進んだため2つの論文に分けて、ナッシュ均衡の存在だけを扱った論文と、進化的安定性を扱った論文にする方向で進めた。進化的安定性の論文では寛容均衡だけでなく、対照的2戦略均衡という協力的なプレイヤーと利己的なプレイヤーしかいないものも分析でき、しかもこれがもっとも安定であるという結論が出た。このとき使用する安定性概念として、スタンダードな概念である中立的安定性を多数戦略均衡に適用することにも成功した。この部分はグレーヴァが国際学会で報告した。また寛容均衡のロジックは段階ゲームが囚人のジレンマでなくても成立することが明らかになり、一般の社会ゲームの分析の糸口となることがわかった。
国内実験の分析においては理論論文が主張している、多様な戦略の共存、マルコフ的ではない行動パターン、裏切られたらやめるという行動(パートナーシップを続けて利己的に行動するのではない)などがデータから見られることがわかった。これらはどれも通常の繰り返し囚人のジレンマ実験で支配的に観察されるものとされていたので、自発的に継続するという環境が本質的に異なる行動を誘発していることがわかった。また、理論では結論が出ていなかった、自発的継続モデルで協力率は高まるのか、という最大の問題については、高まるという結論に至った。しかし、その要因については理論的課題となっている。戦略分布の分析においては、理論値そのものとは異なるが、寛容均衡の6つの均衡戦略に「内的バランス」があるという点では理論を支持する結果を得た。3期間の行動履歴パネルによる戦略分布の計算も、最尤法とそろえて最初の3期間のデータを除いたものでやり直し、全データのときとほぼ同じ結果を得た。国際実験においては、2019年9月にバンコクのモンクット王工科大ラートクラバン校とイスラマバードのパキスタン開発経済大学院でそれぞれ実験を行なった。
【研究代表者】