東アジアのイノシシ・ブタの遺伝的源流に位置するベトナムのイノシシ属の遺伝子調査
【研究分野】応用動物科学
【研究キーワード】
イノシシ / ブタ / ベトナム / 遺伝子解析 / 系統解析 / 野生動物 / 家畜化
【研究成果の概要】
本海外学術調査は、ベトナムの野生イノシシと家畜ブタに関して形態的計測と遺伝学的解析により、東アジアに広く分布する野生イノシシや東アジアの家畜ブタの遺伝的な源流はベトナムにあることを検証することを目的として行った。平成14年〜16年の3年間にわたり、ベトナムの北部、北西部、中部の山岳地帯に生息する野生イノシシとベトナムの山岳少数民族にて長年飼育されているベトナム在来ブタについて調査を行った。形態的計測は、主に各部落の農家に保管されている骨や博物館等に保管されている骨について行い、遺伝学的解析は、骨から採取した骨粉のほかに、現生動物に関しては、毛根や肉片などからDNAを分離してミトコンドリアDNA(mtDNA)の多型解析により系統解析を行った。3年間でベトナム各地にて調査収集したサンプルは248検体であり、それを遺伝的に解析し以下の成果を得た。
1)本海外学術調査のきっかけとなったリュウキュウイノシシの起源がベトナムであると言う仮説は、本調査により現在もベトナムにはリュウキュウイノシシと遺伝的に近い野生イノシシが生息していることが証明されたことから、上記仮説を遺伝的に検証した。
2)ベトナムに生息する野生イノシシとベトナム各地で飼育されている在来ブタは遺伝的に極めて多型に富んでおり、東アジアの家畜ブタの基層を形成する遺伝子集団であることが証明された。
3)ベトナムには粗食に耐えうる在来ブタから形態的に小さいミニブタまで広く飼育されていることから、東アジアのイノシシ属の起源にふさわしい遺伝子資源をベトナムの在来ブタは有していることが証明された。
上記成果の一部は英文誌にすでに公表されており、平成15〜16年度に得られた成果については現在投稿準備中である。
【研究代表者】