統計的漸近解析の基礎理論
【研究分野】統計科学
【研究キーワード】
漸近理論 / 漸近展開 / 尤度解析 / 確率過程 / 高頻度観測 / フラクショナルブラウン運動 / 確率微分方程式 / Euler-Maruyama近似 / 擬似尤度解析 / ジャンプ / 退化拡散過程 / Wiener汎関数 / Skorohod積分 / スパース推定 / マリアバン解析 / 極限定理 / モデル選択 / リード・ラグ / 統計数学 / 確率論
【研究成果の概要】
エルゴード的な状況での一般Wiener汎関数の分布の任意次の漸近展開が得られることを、C. A. Tudor氏との共同研究で見出している。この応用として、混合型フラクショナルブラウン運動の2次変動の分布の漸近展開を導出した。ハースト係数Hの値によって展開の形が変化し、漸近展開は複雑なものになる。
確率微分方程式の解のEuler-Maruyama近似に対する分布論的漸近展開を、マルチンゲールの漸近展開法(Yoshida 2013)によって与えた。ランダムシンボルを特定し、汎関数のMalliavin共分散の漸近非退化性を示し、漸近展開式の解析的正当性を証明した。非エルゴード統計であり、混合正規型の漸近展開である。
離散時間観測されたジャンプ拡散過程の拡散パラメータの推定問題においてはジャンプを的確に除去することが必須である。従来の閾値法は、理論上有効性が証明されているが、チューニングパラメータに結果が大きく依存し、実際の安定性および精度は長年問題となっていた。グローバルジャンプフィルタを導入し、この問題を解決した。グローバルジャンプフィルタは、確率過程の各増分のジャンプの判定に全ての増分を利用する。フィルタは適合的でなくなり、マルチンゲール理論と相性が悪いが、推定量の漸近挙動を解明した。擬似尤度解析(Yoshida, 2011)を構成し、ベイズ型推定量の漸近挙動も示した。
退化拡散過程は生命科学等の多くの応用に現れる。非退化拡散過程の統計推測理論は高度に発達しているが、退化拡散過程のそれは未発達である。エルゴード的退化拡散過程に対して、パラメータの適合型推定量を構成し、その漸近正規性を証明した。退化成分のドリフト推定量は非退化成分の拡散係数の推定量よりも収束は速く、また、非退化成分の推定量の最適分散が退化成分の観測の情報によって小さくでき、漸近効率が上がることを示した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2017-04-01 - 2021-03-31
【配分額】15,990千円 (直接経費: 12,300千円、間接経費: 3,690千円)