細胞内ミクロ環境応答型高分子ミセル型ナノデバイスの創製とがん標的治療への展開
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
ドラッグデリバリー / 高分子ミセル / がん化学療法 / 制ガン剤 / 環境応答性 / がん標的治療 / ナノテクノロジー / がん / 化学療法 / 制がん剤 / ブロック共重合体 / DDS / pH応答性 / ポリエチレングリコール / 抗がん剤 / 細胞内環境応答性 / アドリアマイシン / 放出制御
【研究成果の概要】
ガン化学療法において、安定に保持した薬物を固形ガンへ効率よく送達せしめ、有用な形で放出する薬物送達システム(DDS)の開発が待望されている。これまでに研究代表者らは、ブロック共重合体の自己会合によって形成される高分子ミセル型DDSに関する研究開発を行ってきた。そこで本研究では、血中における安定な薬物保持と標的細胞における効率的な薬物放出を実現するために高分子ミセルを構成するブロック共重合体の内核構成鎖にpH感受性結合(シッフ塩基)を介してアドリアマイシン(ADR)を導入することによって、細胞内低pH環境に応答してADRを放出する環境応答性高分子ミセルを構築した。本研究では、pH応答型ADR内包高分子ミセルが血中で長期滞留し、固形ガンにおいて集積した後に、選択的にADRを放出することでフリーのADRよりも優れた制ガン活性を示すことを明らかにした。また本研究では、このpH応答型ADR内包高分子ミセルを難治ガンとして知られる膵臓ガンの治療へと展開し、腫瘍血管の透過性を一過的に高めるTGF-β阻害剤との併用によって、 ADR内包ミセルの腫瘍集積性が顕著に高まり、優れた治療効果が得られることを明らかにした。さらに、本研究では、高分子ミセルの表層に標的指向性分子(リガンド)を装着することによって、より低濃度で優れた薬効を得ることに成功した。以上のように、本研究で創製した高分子ミセル型薬剤キャリアは、難治ガンに対して有効であり、薬剤の投与量を低下させることによって副作用の低減とQOLの改善をもたらすことが期待できる。このように、本システムは、ガン標的治療に新しい局面を切り拓くものであり、ガン治療分野に多大な貢献をなすことが確信される。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山崎 裕一 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
西山 伸宏 | 東京大学 | 大学院・医学系研究科 | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2005 - 2007
【配分額】47,190千円 (直接経費: 36,300千円、間接経費: 10,890千円)