SAC-CI法を中核とする大規模計算システムの構築と実用化
【研究分野】物理化学
【研究キーワード】
SAC / SAC-CI法 / 光合成 / 励起状態 / ポルフィリン / ベクトル化 / 高速化 / 量子化学 / プログラム
【研究成果の概要】
(1)高速化:大型ベクトル計算機の能力、容量を最大限に引き出すようにアルゴリズムの改良、ベクトル化を行った。まず、SAC85プログラムにおいて最も計算時間を要するバミルトニアン行列の計算とその対角化部分を重点的に行った。前者では、従来のものとは全く異なるアルゴリズムを提案し、それを採用することにより5倍程度の加速に成功した。後者では、ベクトル化率の向上により20倍、更に収束性の改善により10倍程度の加速に成功した。また、収束性の改善によりこれまで求まらなかった解も計算できるようになった。これらの成果から現在の制約は計算時間よりもむしろ一時的に保存するデータの取り扱いに移行した。
(2)ワークステーション化:ワークステーションユーザーが急速に増加していることを考慮し、SAC/SAC-CI法のプログラム(SAC85)がUNIX環境で作動するように全てのステップを変更した。その際、入出力ファイルの取り扱いを自動化し、また、計算規模に関係なく一つのモジュールで計算できるようにメモリーアクセスに変更を加えた。更に、結果解析プログラムなどを追加した上で、プログラム全体の統一を行った。その際、マシン依存性がある箇所について対応できるように整備を行った。
(3)プログラム使用法の簡略化:理論を十分理解していないユーザーでも無理なく使用でき、正しい結果を得ることができるように配慮した入力方法に変更した。このため、計算パラメーターは我々の経験から得たデフォルト値を設定し、不要なパラメーターは入力から除外した。また、中間データを保存する外部ファイルをユーザーが意識しないで計算ができるようにファイル構造を改善した。更に、入力についてはプログラムマニュアルの再整備を行った。結果の出力内容については再検討を行い、一般ユーザーに分かり易い出力を行うように変更した。
(4)応用計算:大規模分子に対する応用として、(a)光合成反応中心を構成するスペシャルペア、Bacteriochloro-phyll、Bacteriopheophytinなどの励起状態の研究、(b)フタロシアニンなどの色素化合物の研究、(c)過酸化水素分解酵素であるHRPCOおよびHRPのcompound IIのモデル系の研究などで成果を挙げた。また、(d)SAC-CI法を用いた構造最適化法の開発に成功し、励起状態反応面の精密な解析を行った。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
江原 正博 | 京都大学 | 工学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
牛尾 二郎 | 日立製作所 | 中央研究所 | 研究員 |
多田 宰 | 東芝(株) | 研究開発センター | 主任研究員 |
中井 浩巳 | 京都大学 | 工学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
波田 雅彦 | 京都大学 | 工学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】1995 - 1997
【配分額】13,900千円 (直接経費: 13,900千円)