双生児法による教育過程とその成果に関する発達的行動遺伝学研究
【研究キーワード】
双生児法 / 行動遺伝学 / 遺伝と環境 / 認知能力 / 自尊心 / パーソナリティ / うつ / 教育動機 / 利他性 / 実行機能 / ストレスフルライフイベント / 主観的幸福感 / エピジェネティック / 縦断研究 / 脳画像 / 不一致一卵性
【研究成果の概要】
本研究は、教育的・社会的に形成された人間のさまざまな心理的・行動的形質を説明する遺伝的・環境的な個体差の要因分析を、20年以上にわたり保持してきた思春期と成人期の2コホート、ならびにweb調査会社のコホートからなる双生児データによって行動遺伝学的に明らかにしようとした。思春期コホートでは認知能力や学業成績、利き手に及ぼす環境の影響について遺伝要因を統制することでより具体的・動的に明らかにした。成人期コホートでは利他性や教育動機やうつの遺伝・環境構造や、自尊感情とパーソナリティの発達的変化への遺伝と環境の影響を明らかにした。
【研究の社会的意義】
本研究が明らかにしたさまざまな心的形質への遺伝と環境の要因分析は、教育や社会性、メンタルヘルスなど、こんにちの社会的問題に直結する心的な側面に関するものである。これらは通常、もっぱら環境の影響によって左右されるものと考えられがちであるが、遺伝要因がその規定にあること、それを考慮した上で環境要因が独自にどのように関わってくるか、あるいは発現の媒介・調整要因として働いているかを考えねばならないことを、個々の領域に応じて具体的に示したものである。DNAレベルから個人の遺伝子の影響が明らかにされつつある今日、このような知見が遺伝と環境に関する丁寧な言説を生み出す契機になるものと考えられる。
【研究代表者】