情動を制御するBDNFの直接効果の解明
【研究分野】基盤・社会脳科学
【研究キーワード】
BDNF / うつ病 / 多機能遺伝子改変 / 肥満 / 大脳皮質 / 認知 / ストレス / 側坐核 / ノックダウン / 過剰発現
【研究成果の概要】
脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現が増えること・減ることが気分を変化させ、精神疾患発症に関与すると考えられていた。本研究では、この仮説を実験動物個体で証明することに取り組んだ。BDNFの発現を時期特異的、脳領域特異的に増やす・減らす介入を行った。ストレス負荷が無いと考えられる通常飼育では、いかなる介入も情動・認知に影響を与えなかった。涙の基礎分泌を自律神経応答の指標として、ストレス負荷からの回復過程を調べたところ、BDNFの発現低下は、ストレスからの回復を遅くさせた。このことから、BDNFは健康な状態よりもむしろストレスが負荷された状態において、機能を発揮する分子であると推測された。
【研究の社会的意義】
うつ病のバイオマーカーとして血液中のBDNF量が注目されている。これまでは、うつ病の診断基準を満たすかどうかで疾患群と健常群を分けて解析されてきた。今回の研究から、BDNFはうつ病の直接的な原因というよりも、ストレス応答にかかわる分子であることが示唆された。それにより、ヒトにおいて高ストレス状態・低ストレス状態の分類や、ストレスレジリエント・ストレス脆弱の分類を設けて、BDNF量を解析することを提案できる。うつ病のかかりやすさや初期症状をストレス応答で切り分ける研究へと展開することが期待できる。
【研究代表者】
【研究協力者】 |
鈴木 暢 | |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2015-04-01 - 2019-03-31
【配分額】18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)