肝微小環境から捉えるビタミンE同族体の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)改善機構
【研究キーワード】
肝疾患 / 栄養 / 細胞・組織
【研究成果の概要】
我が国では、NASH患者は約100万人弱で成人人口の1%に達している。NASH治療におけるビタミンE投与は一定の有用性が示されながらも、治療効果への期待と副作用への懸念のバランスから、絶対的選択肢とはなっていないのが現状である。ビタミンEのNASH改善機構が明らかとなれば、より病態に適した投与タイミングの決定や、配合治療製剤の開発が可能となる。
本研究では病態の亢進と改善が複雑に展開するNASH改善過程における肝微小環境に着目している。これまでに、創傷治癒に関わる細胞外マトリックスであるテネイシンの欠損は、肝炎初期段階における組織再生を遅らせ、代償的過形成や線維形成を亢進させることを明らかにした。一方で、ビタミンE同族体のNASH改善機構については、NASH発症初期において、トコトリエノールがタイプⅠコラーゲンおよびタイプⅣコラーゲンの遺伝子発現を顕著に低下させ、線維化抑制に寄与することを報告した。配合治療製剤の開発を目指した検討では、NASHからの回復過程における魚油とビタミンEの相乗効果について検証を行った。NASH回復過程の肝臓において、魚油の投与により脂質合成、線維化、炎症関連遺伝子発現が低下すること、魚油と同時にα-トコフェノールまたはトコトリエノール混合物を投与すると、脂質合成および線維化関連遺伝子の抑制がさらに増強されることが明らかとなった。しかしながらビタミンE同族体の違いによる増強効果の差は認められなかった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
藤原 葉子 | お茶の水女子大学 | 基幹研究院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
日下部 守昭 | 東京大学 | 大学院農学生命科学研究科(農学部) | 特任教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)