新規バイオマーカーに基づく免疫抑制剤の薬物動態・薬力学解析と新しい治療概念の提案
【研究分野】医療系薬学
【研究キーワード】
臓器移植 / 免疫抑制剤 / バイオマーカー / cDNAマイクロアレイ / ラット / 拒絶反応 / 薬物動態・薬力学解析 / PD analysis
【研究成果の概要】
針生検に代わる、低侵襲、迅速、頻回にモニタリング可能、かつ信頼性の高い拒絶反応のバイオマーカーを開発すると同時に、免疫抑制剤の治療効果を反映するバイオマーカーを開発することを目的に、以下の研究を行った。
1)ラット心移植および肝移植モデルにおいて血液中の遺伝子発現をcDNAマイクロアレイにて網羅的に解析し候補遺伝子の探索を行う
急性拒絶反応により発現が大きく誘導され、かつ免疫抑制剤シクロスポリンの投与によりその発現誘導が完全に抑制される10個の遺伝子を心移植および肝移植モデルにおいて発見した。さらに、薬力学的解析を行い、免疫抑制剤の血中濃度と発現量との間にも相関関係が見られた。これらの遺伝子は拒絶反応および免疫抑制剤の薬効のマーカーとして有用と考えられる。
2)遺伝子マーカーの治療学的有用性を臨床症例において明らかにする
慶應義塾大学病院の生体肝移植症例において、遺伝子マーカーが拒絶反応および免疫抑制剤の薬効のバイオマーカーとして有用かどうか評価した。急性拒絶を経験した3症例において、心移植モデルから得られた4種の遺伝子マーカーの末梢血液中発現量を定量的PCR法により測定したところ、移植後約1週間は低値に安定していたが、バイオプシーにより拒絶と診断される目より5日前後早い時期にこれらの遺伝子の発現は有意に上昇し始め、2〜3日前にはベースラインの2〜6倍程度高い発現を示した。また、従来臨床で用いられてきた肝機能検査値の上昇よりも早期にこれらの遺伝子の発現は上昇した。一方、肝移植モデルから得られた遺伝子マーカーの発現も急性拒絶を経験した生体肝移植症例において経時的に測定したところ、拒絶と診断される2日前にベースラインの10倍程度発現上昇することが確認された。
以上の結果から、これらの遺伝子は低侵襲、迅速、頻回にモニタリング可能な急性拒絶および免疫抑制剤の薬効のバイオマーカーとして有用と考えられ、国際特許出願を行うことができた(国際特許出願No.PCT/JP2005/009871、国際特許出願No.PCT/JP2006/300336)。
【研究代表者】