超音波刺激による神経細胞活動誘発と運動誘発メカニズムの解明
【研究キーワード】
超音波 / 神経細胞 / 運動誘発 / 発火 / 数理モデル / マイクロバブル / 力学刺激 / 興奮伝播
【研究成果の概要】
本研究では,超音波照射により神経細胞群に生じる集団的発火とラットの経頭蓋超音波照射により誘発される運動に関する実験を実施し,両者の関係を結びつけることにより,超音波照射のもたらす力学的刺激が脳神経系の活動及び生体の運動を誘発するメカニズムについて知見を得ることを目的とする.また,それらをシミュレーションにより再現する数理モデルを構築し,運動誘発の最適条件などを検討するためのツールを開発することを目指している.これまでのところ,基盤上に培養された神経細胞群に対して,超音波照射を行い,カルシウムイオンが放出される様子を再現することに成功している.さらに,低周波の超音波条件においては,より低周波な程,低強度の超音波によりカルシウムイオンの放出が生じることが確認されている.得られたデータと,従来の知見に照らし合わせると,この領域でのカルシウムイオンの放出を誘発しているのは,キャビテーション現象による可能性が高いと判断された.すなわち,低周波の超音波照射における低圧時に,細胞近傍で発泡現象が生じ,発泡したキャビテーション気泡が超音波音場の中で局所的に高圧部を形成することにより神経細胞が刺激を受けたと考えられる.また,より低周波の方がより低強度でカルシウムイオンの放出が生じた理由としては,キャビテーション気泡の発泡プロセスに時間的な遅れがあるため,ゆっくりとした時定数の低周波超音波の方がより低強度でもキャビテーション現象の誘発に繋がったと考えられる.今後はこの現象をさらに詳細に調べ,低強度でカルシウムイオンの放出を引き起こすための条件について調べていくのが重要となる.また,カルシウムイオンの放出だけでは,神経細胞の集団的発火が起きていることにはならないため,この部分についても調べて行くことが重要となる.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
関 和彦 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター | 神経研究所 モデル動物開発研究部 | 部長 | (Kakenデータベース) |
神保 泰彦 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 教授 | (Kakenデータベース) |
榛葉 健太 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)