脂質代謝能力の違いは中高年の生活習慣病の発症リスクと関連するか?
【研究キーワード】
脂質代謝能力 / 糖尿病 / 高血圧症 / 脂質代謝異常症 / ゲノムワイド関連解析 / 遺伝子多型 / 多遺伝子リスクスコア / 生活習慣病 / 最大脂質酸化量 / メタボリックシンドローム / コホート研究
【研究成果の概要】
本研究は早稲田大学の卒業生およびその配偶者を対象とした観察型コホート研究“WASEDA’S Health Study”と連携して実施している。2021年度もCOVID-19の影響で測定を実施できなかったため、ベースライン測定データを用いて脂質代謝能力と生活習慣病との関連について解析を行った。
脂質をエネルギー基質として利用する能力である脂質代謝能力は生活習慣病のリスクとの関連が示されている(Rosenkilde et al., 2010)。しかし、中高齢者では脂質代謝能力と生活習慣病との関連について検討されていない。そこで、”WASEDA’S Health Study”のベースライン測定参加者の内、解析に使用するデータが揃っている1105名で解析を実施した。
脂質代謝能力の指標は運動負荷試験により測定した脂質酸化量の最大値(maximal fat oxidation:MFO)を用いた。性別に除脂肪体重当りのMFOで三分位に分け、第1三分位群を基準にした場合の他の群の糖尿病、高血圧症、脂質代謝異常症の多変量調整オッズ比および95%信頼区間(CI)をロジスティック回帰モデルで算出した。
高血圧症、脂質代謝異常症のオッズ比に有意な差は認められなかったが、糖尿病において第3三分位群で有意に高いオッズ比を示した(OR: 2.95, 95%CI: 1.39-6.26)。しかし、高血圧症、脂質代謝異常症、糖尿病など種々の疾患に対する服薬の有無で層別解析を実施したところ、服薬していない人では糖尿病のオッズ比の有意差は認められず、服薬している人のみで有意に高いオッズ比が認められた(OR: 4.66, 95%CI: 1.85-11.72)。
よって、中高齢者において脂質代謝能力と生活習慣病は関連しないと推察された。また、生活習慣病の服薬者では脂質代謝能力が高まっている可能性が示された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
谷澤 薫平 | 早稲田大学 | スポーツ科学学術院 | 専任講師 | (Kakenデータベース) |
田端 宏樹 | 順天堂大学 | 大学院医学研究科 | 博士研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2018-06-29 - 2023-03-31
【配分額】6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)