網膜疾患に対する血液網膜関門のGLUT1を介した抗酸化物質輸送の意義
【研究分野】医療系薬学
【研究キーワード】
血液網膜関門 / vitamin C / GLUT1 / 酸化的ストレス / 抗酸化物質 / 糖尿病 / TR-iBRB細胞 / 輸送機構 / 担体輸送 / 条件的不死化細胞株
【研究成果の概要】
抗酸化物質であるvitamin C (ascorbic acid, AA)の網膜への供給機構解明は、網膜の酸化的ストレス保護、さらに網膜疾患の予防および治療において重要である。本研究は、酸化型vitamin C (dehydroascorbic acid, DHAA)の網膜移行性を血液網膜関門(BRB)に存在するヘキソース輸送担体であるGLUT1が担っていることを証明すること、GLUT1におけるDHAAの輸送機構を解明すること、さらに糖尿病状態におけるDHAAの網膜への輸送能の変動について解明することを目的とした。BRB輸送解析は^<14>CでラベルしたAAおよびDHAAを用いて解析した。Integration plot法を用いた血液から網膜への移行性解析から、[^<14>C]DHAAは[^<14>C]AAと比較して38倍高いBRBを介した透過クリアランス値を示した。高速液体クロマトグラフィー解析から、網膜に取り込まれたDHAAは主にAAに変換されて存在することが示唆された。内側血液網膜関門のin vitroモデルとして用いたTR-iBRB細胞における輸送機能解析から、TR-iBRB細胞における[^<14>C]DHAA取り込みはNa^+非依存性、濃度依存性(Km=93μM)を示した。さらに、[^<14>C]DHAA取り込みは促進輸送型ヘキソース輸送担体(GLUT)の基質であるD-glucose、3-0-methyl-D-glucoseおよび2-deoxyglucoseや阻害剤であるphloretinおよびcytochalasin Bによって強く阻害された。D-Glucoseによる[^<14>C]DHAAの取り込み阻害定数(IC_<50>)は5.6mMであった。磁気ビーズ抗体を応用した網膜毛細血管内皮細胞高純度単離法を開発し、網膜毛細血管内皮細胞における発現遺伝子の定量を可能とした。Ex vivoラット網膜毛細血管内皮細胞には、GLUT family中でGLUT1が高く発現し、DHAAの網膜への輸送には主な役割を担っていることが明らかとなった。Streptozotoc-inを投与して作製した糖尿病モデルラットにおける[^<14>C]DHAAの網膜への透過クリアランスは、血中D-glucoseの上昇に伴い、コントロールに比べて31%低下した。以上の結果から、網膜へのvitamin Cの供給はBRBに発現しているGLUT1を介してDHAAとして輸送されることが明らかとなった。さらに、糖尿病時にはGLUT1の基質であるD-glucose濃度が上昇することから、網膜へのDHAA輸送能が低下し、網膜内へのvitamin C供給が減少する可能性が示された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
登美 斉俊 | 富山医科薬科大学 | 薬学部 | 助手 | (Kakenデータベース) |
寺崎 哲也 | 東北大学 | 未来科学技術共同研究センター | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】13,200千円 (直接経費: 13,200千円)