腫瘍ウイルス感染初期に形成されるエピゲノム異常と発がん機構の解明に向けた統合解析
【研究キーワード】
HTLV-1 / EBV / エピジェネティクス / シングルセル解析 / ウイルス / エピゲノム / トランスクリプトーム / EBウイルス / 悪性リンパ腫 / EZH2
【研究成果の概要】
腫瘍ウイルスによる宿主エピゲノムへの影響を明らかにするために、多層的オミックス技術を用いてHTLV-1感染からATL発症までの継時的な解析を行い、感染によって特徴的なエピゲノムへと変化したATL前駆細胞が形成されることを明らかにした。またその後の腫瘍化過程で獲得するさらなるエピゲノム異常や遺伝子変異と共役し、高悪性度の腫瘍細胞へと進展することを見出した。さらに、HTLV-1やEBVによるEZH1/2依存的なエピゲノム異常の機能的重要性を示し、エピゲノム治療が有望であることを証明した(Cell Rep 2019)。シングルセル解析技術による感染細胞の高感度解析プラットフォームも確立した。
【研究の社会的意義】
前癌状態の解明は、癌の予防、早期治療介入を達成する上で不可欠である。HTLV-1及びEBV感染は最初のhitであることは自明であるが、発症リスク評価は確立されておらず、臨床的に有効な介入法もない。関連疾患発症後の予後は極めて不良である。本研究の成果は、将来の早期治療介入の実現において重要な基礎的データであり、今後のさらなる研究によってエピゲノム異常を標的としたより安全で効果の高い治療法の開発が促進されると期待される。また、エピゲノム異常による素地の形成が、がんの進化過程において不可欠であることを示す重要な成果である。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2021-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)