抗うつ薬により惹起される悪性症候群の発現と体内動態との関係解明
【研究分野】応用薬理学・医療系薬学
【研究キーワード】
悪性症候群 / 抗うつ薬 / クロミプラミン / ベラトリン / 発熱 / セロトニン / マイクロダイアリシス / ラット / 発熱反応
【研究成果の概要】
高熱、筋硬直、発汗、意識障害などを呈する極めて重篤な副作用である悪性症候群は、抗うつ薬によっても惹起されることが、近年報告されている。本研究では、悪性症候群に特徴的症状である発熱反応に着目し、セロトニン(5-HT)再取込み阻害能が異なる抗うつ薬を悪性症候群のモデル動物に投与して発熱を惹起させ、抗うつ薬の体内動態、脳内5-HTとレベルおよび体温上昇との関係を解明することを目的としている。
平成9年度は、抗うつ薬の体内動態を精査するために、血中および脳組織中の抗うつ薬クロミプラミン(CMI)の定量法を高速液体クロマトグラフを用いて開発した。これを用いて、CMIをラット静注した後の血中および脳組織中濃度を測定し、体内動態を解析した。次に、脳内伝達物質の放出剤であるveratrineを、ラットを用いて体温調節中枢の存在する視索前視床下部に作用させた後、5-HTの再取り込み阻害剤であるCMIを投与することにより、発熱症状を再現させることができた。平成10年度は、抗うつ薬とveratrineを併用したラットの脳内5-HTレベルをマイクロダイアリシス法により測定した。その結果、veratrine併用ラットの脳内5-HTレベルは、正常ラットよりも高いレベルを推移した。
以上の結果から、以下のことが示唆された。1)veratrineはドーパミン受容体遮断や5-HT受容体作動薬による体温上昇を著しく増強することがわかり、この方法により、悪性症候群の発熱症状を効率よく発現させることができた。2)脳中CMI濃度と体温の推移の比較から、体温上昇の発現に遅れが観察された。3)CMI投与後の5-HTレベルの推移が体温の推移とほぼ一致したことから、CMI投与による上記の体温上昇効果発現の遅れは、体温調節中枢でのCMIによるシナプス間隙での5-HT蓄積過程が主な要因であることと考えられた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小瀧 一 | 東京大学 | 医科学研究所・附属病院 | 薬剤部長 |
青山 隆夫 | 東京大学 | 医学部・附属病院 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)