全身性腫瘍免疫能獲得に及ぼすケモカイン遺伝子導入の波及効果
【研究分野】応用薬理学・医療系薬学
【研究キーワード】
腫瘍免疫 / 免疫反応調節薬 / 遺伝子導入 / ケモカイン / インドメタシン / 癌 / サイトカイン / 併用療法
【研究成果の概要】
腫瘍退縮においてTリンパ球、NK細胞を初めとする免疫細胞は重要な働きをしている。我々はケモカインの中でもメモリーTリンパ球の遊走因子であるmacrophage inflammatory protein-1a(MIP-1a)と、マクロファージの前駆細胞である単球へ作用するmonocyte chemottactic protein-1(MCP-1)に着目した。すでに、これらの遺伝子を導入した癌細胞を用いてマウスに移植後の癌増殖に影響が生じ、特にヒトMIP-1aでは約30%のマウスで癌の生着が拒絶され、アポトーシス様の細胞融解がおこっていることを報告している。今回、我々はMCAF/MCP-1の遺伝子を導入したColon26clone20結腸癌細胞(以下、C20)を用いて、宿主免疫反応への影響を検討するとともに、免疫反応調節薬(BRM)を併用して、制癌治療方法の可能性を検討した。癌細胞を移植された動物にインドメタシンとBRMを併用投与したところ、腫瘍を拒絶するマウスが増加し、顕著な抗腫瘍効果が得られた。この効果はT細胞とB細胞を持たないSCIDマウスでは認められなかった。さらに、腫瘍を拒絶したマウスに親株を再移植したところ、殆どのマウスが移植細胞を拒絶し、腫瘍免疫が得られていることが確認された。MCAF/MCP-1遺伝子導入癌細胞を移植したマウスではインドメタシンとBRM併用による抗腫瘍効果は弱められる傾向があった。以上のことから、担癌宿主の免疫を低下させるような腫瘍に関してはMCAF/MCP-1が腫瘍へのマクロファージ浸潤を促すが充分なマクロファージの活性化を起こさないこと、および、マクロファージを調節する薬物との併用により抗腫瘍効果が得られる可能性があることが示さた。
【研究代表者】