遺伝子タイピングによる薬物血中濃度と薬効・毒性の予測
【研究分野】応用薬理学・医療系薬学
【研究キーワード】
CYP2C19 / N-アセチル転移酵素 / 遺伝子タイピング / 非血液検体 / プロカインアシド / オメプラゾール / イソニアジド / サラゾピリン / 潰瘍性大腸炎 / Helicobacter pylori / 除菌治療効果 / 毛髪 / 口腔粘膜細胞 / 爪 / PCR-RELP / 血液 / N-アセチルトランスフェラーゼ / 遺伝子型 / 表現型 / 多型性 / プロカインアミド / PCR / RFLP
【研究成果の概要】
1.本研究課題により確立した多型性代謝酵素(N-アセチル転移酵素(NAT2)、チトクロムP4502C19)の遺伝子タイピング法は、操作が簡易・迅速に行え、血液のみならず毛髪、口腔粘膜、爪等から可能であることから、日常臨床への応用並びに将来の大規模疫学研究において有用と期待される。
2.NAT2により代謝されるイソニアジド、プロカインアミド、サラゾスルファピリジン(SASP)の3薬剤について健常被験者における単回投与実験を行い、尿中並びに血中での代謝物/未変化体(SASPの場合、分解生成物スルファピリジン)比を求めた結果、遺伝子型と表現型との一致を認めた。またこれら薬剤服用患者においても健常人とほぼ同様の傾向が見られたことから、代謝過程において、併用薬、肝障害等後天的影響よりも、代謝酵素の遺伝子型の寄与の方が大きいと考えられた。
3.オメプラゾール(OPZ)と抗生剤併用時のH.pyloriの除菌効果とOPZの代謝酵素CYP2C19の遺伝子型との関連性について、H.pylori陽性の消化性潰瘍患者におけるOPZ+AMPC(+CAM)併用療法を実施した。その結果、正常遺伝子を有する患者での除菌率は41-88%であるのに対し、変異遺伝子の組み合わせの患者(PM)では全員が除菌できた。よって、CYP2C19遺伝子型がPMと判定された患者は、OPZとAMPCの併用療法で除菌できる可能性があり、CAMなど耐性を生じやすい薬剤の使用を避けられる点で有利と考えられる。
以上より、薬物代謝酵素の遺伝子型から、薬物体内動態と薬効毒性の予測並びに患者への最適な治療レジメの選択が可能であると考えられた。代謝活性は肝障害、併用薬、喫煙などの環境要因の影響も受けることから、それらと遺伝子型との定量的寄与の評価も必要であり、そのためにはpopulation pharmacokinetics等の応用が今後期待される。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
谷川原 祐介 | 神戸大学 | 医学部・附属病院 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1995 - 1997
【配分額】7,400千円 (直接経費: 7,400千円)