発達脳における新規構造物BUDOの存在意義の解明
【研究キーワード】
ミクログリア / 貪食 / 血管 / 赤血球 / マイクログリア / マクロファージ / 発達期
【研究成果の概要】
脳内免疫細胞であるマイクログリアは、脳内に侵入した異物や死細胞などを貪食・除去することで発達や恒常性に寄与する。被貪食物の消化を担うリソソームは、リソソームマーカーであるCD68により可視化され、通常はマイクログリア内部で不規則な形状で存在している。しかし、生後初期のマウス脳内においては球状のCD68が集積した葡萄のような構造物が局所的に存在することを発見した。我々はこの特徴的な未知の構造物をBUbbly Dense Organizationまず時空間的分布を詳細に検証した。BUDOは全脳に広く分布していたが、特に脳表付近や側脳室横に多く見られる傾向があった。またBUDOは、生後0, 7,14日齢のマウス脳内には存在したが、60日齢では存在しなかったことから、発達期に特有の構造であることが示唆された。さらに我々は、BUDOの内部やその周辺領域に、赤色の自家蛍光が常に存在することを発見した。自家蛍光を持つ生体由来の物質として血液を想定し、以降はBUDOが血液漏出に応答した構造であるという仮説を検証した。まず、赤血球の抗体染色を行なったところ、自家蛍光部位特異的に赤血球が漏出しており、その一部はBUDO内部に取り込まれている様子が観察された。そこで、生理条件下ではBUDOが存在しない成体マウスの脳内に血液を投与したところ、投与領域周辺に赤血球が集積するとともに、BUDOが誘導された。以上の結果から、BUDOに見られる葡萄のような形態のCD68は、マイクログリアが赤血球を貪食することで形成される構造であることが示された。本研究より、生後初期脳内において未成熟な血管から脳実質への血液漏出が生じており、それにマイクログリアが応答して赤血球などを貪食・除去することで、正常な脳発達に寄与していると考えられる
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2020-07-30 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)