癌における転写ネットワーク変異の体系的解明
【研究分野】応用ゲノム科学
【研究キーワード】
ゲノム / 転写 / コピー数多型 / タイリングアレイ / DNAメチル化 / クロマチン免疫沈降 / マイクロアレイ / ゲノムコピー数 / 染色体変異 / メチル化 / クロマチン修飾 / インスレータ / 発現プロファィル解析 / アレル別コピー数 / ChIP on Chip解析 / 臨床ゲノム学
【研究成果の概要】
癌における転写調節異常の体系的解明を行うために、SNPアレイ、タイリングアレイなどのゲノム解析技術を応用した。
1) ゲノムコピー数解析
SNPタイピングアレイを応用してアレル別にコピー数を測定する手法Genome Imbalance Mapを開発した(Ishikawa, 2005)。ヘテロ接合性の消失(LOH)や片親性ダイソミー(UPD)を判定するために有効であり、1アレル分のシグナル差を検出できるので正常組織の混入が避けられない臨床材料からでも効率よくホモ欠失領域を検出できた。肝細胞癌で8p23領域にあるCSMD1遺伝子のホモ欠失が検出された。また、本技術を健常者のコピー数多型(CNV)の解析に応用して初のCNVマップを報告した(Redon, Ishikawa, Nature 2006)。
2) DNAメチル化解析
DNAメチル化は遺伝子の不活性化機構として注目されていたが、ゲノムワイドに検出する手法の確立が望まれていた。抗メチルシトシン抗体を用いてメチル化CpGを含むDNA断片を捕捉し、ゲノムタイリングアレイを用いて検出する手法を開発した。高CpG領域はPCR増幅のバイアスが顕著であるため、in vitro転写法による増幅を行うことによって再現性の高いシグナルが得られた。メチル化領域はヒストンアセチル化と排他的であることを観察できた(Hayashi, 2007)。
3) 転写ネットワークの解析
遺伝子発現プロファイルデータから共発現する遺伝子を抽出して活性化されたネットワークを推定した(Agg arwal, 2006)。さらにタイリングアレイを用いて転写因子が結合部位を検出し、直接標的となる遺伝子を同定した。また、ヒストンアセチル化やメチル化修飾をゲノムワイドに検出することが可能となった。染色体のインスレーターといわれるCTCFがコヒーシンと共局在することを発見し、クロマチンループ形成にかかわると推定さた(Wendt, Nature 2008)。
【研究代表者】