肝細胞癌新規血清腫瘍マーカーGPC3、AKR1B10の臨床応用
【研究分野】消化器外科学
【研究キーワード】
マイクロアレイ / 血清腫瘍マーカー / 肝細胞癌 / GPC3 / AKR1B10 / 遺伝子治療 / 抗癌剤耐性
【研究成果の概要】
網羅的遺伝子発現解析による肝癌特異的発現上昇遺伝子として同定されたGPC3およびAKR1B10について、50例の切除検体の免疫染色と術前に採取した血清中濃度を比較して高い相関が得られることが示された。さらに術前に血清GPC3が高値であった症例の術後フォロー中の血清について経時的に測定することにより、再発時に上昇しTAEや再切除などの治療によって低下することが確認された。また、初回治療(肝切除による根治手術)後に血清GPC3が低下しない症例が約10%程度存在し、このような患者では有意に術後再発率が高いことも示されている。一方、包括的遺伝子発現解析を行った肝癌切除検体についてDNAを抽出し、SNPアレイを用いた肝癌コピー数解析も併せて行った。同一検体中のコピー数変化と発現レベルとの比較において高い相関性が認められ、遺伝子発現はゲノム変化に強く影響を受けていることが示された(Midorikawa, et al, Oncogene. 2006)。遺伝子治療としては、GPC3を高発現する細胞株HepG2をマウスに皮下移植した腫瘍に、ペプチド由来の抗GPC3モノクローナル抗体を血管内投与すると著名な抗腫瘍が認められ、抗体による肝細胞癌に対する治療効果が期待される。AKR1B10については、PLC/PRF/5細胞株をsiRNAによりノックダウンすることによりアドリアマイシンの感受性が有意に上昇していることが確認された。さらに、PLC/PRF/5をヌードマウスに皮下に移植し、アテロコラーゲンによりsiRNAを腫瘍に浸潤させてアドリアマイシンの感受性を比較したところ、AKR1B10ノックアウト群でアドリアマイシン投与による腫瘍縮小効果が有意であった。これらの実験結果から抗AKR1B10抗体とアドリアマイシンの併用による肝癌に対する分子標的治療の可能性が示された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
堤 修一 | 東京大学 | 先端科学技術研究センター | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】3,600千円 (直接経費: 3,600千円)