ガス分子による赤血球代謝制御技術の確立と光学的微小循環計測に基づく医療への展開
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
微小循環 / ヘモグロビン / 酸素 / 赤血球 / 生体計測
【研究成果の概要】
NOやCOの低分子のガスを利用してヘモグロビンの立体構造を人為的に制御し,解糖系による赤血球内のエネルギー産生を制御する方法論と,その応用について分子レベルから細胞実験,さらに霊長類への投与実験までを遂行した.本課題における成果は主に以下のようにまとめられる.(1)ガス分子を結合させたヘモグロビンを含む赤血球の網羅的代謝解析の結果,COによる解糖系の抑制,NOによる促進といった,立体構造変化に伴う代謝の変動を解糖系の酵素反応ステップごとに捉えることに成功した.また,生体シミュレーションの結果から,ヘモグロビンの立体構造変化は組織への酸素輸送を目的とした赤血球内のエネルギー産生をコントロールするトリガーとして機能し,それは赤血球の酸素センシング機構の一端を担うことを示唆する結果を得た.これらの実験結果を基に,NOヘモグロビン含有赤血球の出血性ショックへ治療への可能性を検討した結果,(2)ヘモグロビン□鎖にNOを結合させた□-NO赤血球は循環内半減期が約1時間であり,ショックに対する酸素供給,血流改善が十分であることが明らかになった.また,ショック前の血圧まで十分回復し,対照として用いた洗浄自己赤血球群より増大する傾向が認められた.(3)また霊長類のコモンマーモセットを用いて輸血実験を行った結果,良好な血圧の回復を示し,霊長類においてもその効果を確認した.さらに輸血後の血液分析から,血漿pH,乳酸値は正常範囲まで回復することが明らかになった,これは□-NO赤血球が組織における酸素の需要に対して十分供給されていることを示す結果である.以上より,赤血球の酸素センシングメカニズムに関する成果と,□-NO赤血球の輸血効果に関する成果を得た.
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】3,300千円 (直接経費: 3,300千円)