リボソームの翻訳制御を介した転写制御のフィードバック機構の解析
【研究キーワード】
翻訳 / 転写 / mRNA分解 / small RNA / uORF / リボソーム / 5'非翻訳領域 / ホウ素
【研究成果の概要】
本研究ではホウ素濃度に応答した、シロイヌナズナのホウ素輸送体、NIP5:1の翻訳制御を介したmRNA分解による転写制御のフィードバック機構を明らかにすることを目的とし、翻訳、mRNA分解、転写の3つの解析を行い、その全体像を明らかにすることにした。1)NIP5;1のmRNA分解を介した転写制御機構の解析:NIP5;1のmRNA分解産物からsRNAが形成され、それがNIP5;1の転写を負に制御しているかをsRNA生成に関わる遺伝子、RDR及びsRNAと結合し、転写を制御する因子、AGO1の変異株を用いて、pre-mRNA解析から、NIP5;1の転写を調べた。結果、野生型では高ホウ素条件によるNIP5;1の転写抑制が見られたが、変異株では高ホウ素条件による転写抑制が見られなかった。このことから、mRNA分解産物から生成されたsRNAがAGO1と結合し、NIP5;1の転写を抑制している可能性が強く示唆された。 2)AUG-UAA上でのリボソーム停滞により誘導される未知エンドヌクレアーゼの解析:これまで、逆遺伝学的解析から、NIP5;1のホウ素依存的な発現制御に関わる遺伝子の特定を行ってきた結果、mRNA分解に関わる遺伝子がみつかった。この遺伝子はRNAの分解酵素ドメインを保存しており、この変異株では高ホウ素条件下でのNIP5;1mRNA蓄積の抑制が弱まる。この遺伝子は細胞質に局在していた。この分解ドメインに変異を導入した株では、NIP5;1のmRNAの蓄積のホウ素応答性が野生型に比べて弱まり、分解ドメインはRNA分解活性を持っていた。このことからNIP5;1のmRNA分解に関わる遺伝子であると推察される。3)NIP5;1のホウ素依存的な翻訳制御に関わる因子の同定:逆遺伝学的解析から、翻訳に関わる遺伝子がみつかった。相補実験を行い、この遺伝子が原因遺伝子であることを確認した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)