全ての病期における肝細胞癌の免疫微小環境の病理学的分類の確立と成立機序の解明
【研究キーワード】
肝細胞癌 / 進行がん / 微小環境 / 腫瘍免疫 / 転移 / 多様性 / 病理
【研究成果の概要】
本研究の目的は、①全ての病期(前癌病変、早期肝細胞癌から切除不能進行肝細胞癌まで)における肝細胞癌の免疫微小環境の病理学的分類の確立と、②各免疫微小環境の成立機序の一端の解明である。2021年度(4年計画の初年度)は、進行期肝細胞癌における免疫微小環境について、原発巣と転移巣の間における違いや多様性を含めて検討するため、進行期肝細胞癌の病理解剖例60例からなる研究コホートを樹立した。それぞれの症例において、原発巣に加えて代表的な転移巣数か所を含むFFPEブロックから標本を再作製し、組織学的所見の再評価を行った。また、一部の症例について多重免疫染色を用いた免疫微小環境の評価を開始した。
組織型を再評価した結果、外科切除例と比較して進行期肝細胞癌では低分化型から肉腫様の形態を示す腫瘍が有意に多いことが確認された。また、興味深いことに、これら低分化型から肉腫様の肝細胞癌の一部においてリンパ球浸潤の増加を伴う一群が認められ、進行期肝細胞癌に特徴的な腫瘍微小環境の存在が示唆された。従って、今後研究を進めることで進行期のがんの微小環境に関する興味深い結果が得られると考えられた。
また、免疫微小環境とその他の腫瘍間質構成要素との関係について検討するため、免疫微小環境と血管増生因子発現、腫瘍血管の相互関係について外科切除検体を用いて詳細な比較・検討を行った。この結果、肝細胞癌では腫瘍免疫応答と血管増生因子発現が互いに負に相関することが示され、肝細胞癌の腫瘍微小環境が4つのImmuno-vascular subtypeに分類できることが判明した。得られた成果は国際誌上に発表した(Kurebayashi et al. Hepatology 2021, Epub ahead of print)。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2021-04-01 - 2025-03-31
【配分額】4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)