一時的配向基を用いた遷移金属触媒反応によるタンパク質ペプチド結合の化学修飾
【研究キーワード】
ペプチド / タンパク質 / 化学修飾 / 銅イオン / アルドール反応 / ペプチド結合 / 配向基
【研究成果の概要】
抗体―薬物複合体などのバイオ医薬品創薬やケミカルバイオロジーの基礎研究において、薬物や蛍光分子などの人工分子をタンパク質の特定の位置に選択的に結合する技術(化学修飾法)が欠かせない。化学修飾法に用いる有機反応は、水溶液中、温和な反応条件(4ー50℃、pH5ー9程度、など)下、進行することが求められる。2000年以降、化学修飾法の研究は進展し、システイン、チロシン、トリプトファン、メチオニンなどの特徴的な反応性を利用した付加反応、酸化還元反応などによる化学修飾が報告された。しかし、これらの手法は対象のタンパク質が上記アミノ酸を持たない場合には適用できない。このような背景のもと、ポリペプチド鎖中に必ず1箇所存在するN末端アミノ酸を活用した化学修飾法を検討した。N末端にイミン形成を介して一時的に結合した配向基を利用すれば、クロスカップリング反応でN末端近傍のアミノ酸を化学修飾できると考えた。
本年度は、市販の生理活性ペプチドに対し、種々の芳香族アルデヒドを一時的配向基として用いるカップリング反応を試みた。すると予期せぬことに、銅イオン存在下、2-ピリジンカルボキシアルデヒドを作用させると、N末端アミノ酸がアルドール反応し、選択的に化学修飾されることを見出した。この反応は種々の生理活性ペプチド、タンパク質に対しても同様に進行し、N末端アミノ酸を選択的に化学修飾することができた。当初目的としたカップリング反応では無いが、新たな形式の化学修飾法を開発することができた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)