イオンチャネルにおける動的構造機能連関の先駆的研究
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
イオンチャネル / 高次構造 / 動的構造 / モデルチャネル / パッチクランプ / 分子生物学 / クライオ電顕 / 分子動力学 / 動的構造機能連関 / クローニング / チャネル蛋白質 / 電気生理学 / 合成チャネル
【研究成果の概要】
ここ10年間に主要なイオンチャネルの一次構造が決定され、site directed mutagenesisと電気生理学の組み合わせにより分子レベルでの構造一機能連関の解明が進められている。しかし膜内高次構造や機能中の動的構造を解析する手法が確立されていないために、電気生理学で得られた単一チャネルの動的データを構造と連関させることは極めて難しい状況にある。分子生物学の成果を生かしてイオンチャネルの動的構造機能連関を明らかにするには方法論上の大きな飛躍が必要とされている。本研究計画は、電気生理学(パッチクランプ、脂質平面膜)や分子生物学のエクスパートに、レーザー顕微分光学、クライオ電顕、分子動力学の専門家を加えて、イオンチャネルの動的構造に関する情報をいかに検出し、電気生理学的に得られた動的情報といかに結び付けるか、という課題に応えられる新しい研究の方法と戦略を創出することを目指した。具体的には、A)天然チャネルの構造機能連関(担当:高井、葛西、東田、久保)、B)人工チャネルの構造機能連関(担当:曽我部、老木、桐野、石田)、C)顕微鏡によるチャネル分子の動態解析(担当:楠見、木下、豊島)、の3本柱を立てて、適宜、議論や共同研究を展開した。その結果、天然チャネルに関しては、1)主としてKチャネルのイオン透過やブロック機構に関する詳細な構造機能連関の知見が得られた。また、人工チャネルに関しては、2)非常に簡単な構造の非ペプチド化合物から、Kイオン選択性や電位依存性を有するチャネルが合成されたり、系統的な構造設計が可能な人工ペプチドチャネルが合成されるなどの目覚ましい成果が得られた。更に顕微鏡技術に関しては、3)1蛍光分子の可視化、1チャネル分子の標識と操作、かごめ化合物と急速凍結の組み合わせによる動的構造の解析などの新技術が開発された。以上の成果によりイオンチャネルの動的構造機能連関の本格的研究へ向けての方向と足場が定められた。
【研究代表者】