電子貯蔵能・特異空間を有するフラーレン-遷移金属錯体の化学
【研究分野】無機化学
【研究キーワード】
フラーレン / アニオン / 遷移金属錯体 / 液晶 / 蛍光 / シャトルコック液晶 / 触媒 / カリウム
【研究成果の概要】
本研究では,フラーレン-遷移金属錯体の合成手法の深化と新反応の発見を可能とする新規高選択的触媒反応場を構築することを目的として,これまで知られている配位子では行えなかった新しい立体的効果,電子的効果を与えることができるフラーレン-遷移金属錯体の合成を行っている.新しい立体効果をもたらすために,シクロペンタジエニル基周辺に深いカップ状のキャビティーを構築した.すなわち,丸いフラーレンの1つの5員環周辺に集中して位置選択的および高効率に剛直な壁およびコネクションを有する有機基(CH2SiMe2Ar ; Arはビフェニル基,テルフェニル基等)を導入した.ここにおいて,フラーレンの1つの5員環がカップの底部,ケイ素原子が底と壁をつなぐコネクション,Ar基が壁となっている.このカップの底にルテニウムやパラジウムなどの金属原子を配位させ,錯体を合成することに成功した.
また,新しい電子的効果をもたらすフラーレン配位子を創製するために,五重付加型フラーレン(C60R5)の還元に関する研究を行った.C60R5のモノアニオン,ジアニオン,トリアニオンを単離し,特に,モノアニオン,ジアニオンについてはX線により結晶構造を明らかにした.ジアニオンは開殻構造を有するラジカルジアニオンであり,結晶中ではラジカルカップリングしたダイマーを与えた.トリアニオンについては七重付加型フラーレン,八重付加型フラーレンの優れた出発物質であることを明らかにした.また,フラーレン-遷移金属錯体の還元も行い,モノアニオン,ジアニオンを単離した.
本研究は,研究代表者が東京大学から科学技術振興機構(ERATOプロジェクト)へ転職したため,平成16年度のみで終了する
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(A)
【研究期間】2004
【配分額】19,240千円 (直接経費: 14,800千円、間接経費: 4,440千円)