糖尿病網膜症における網膜血管病変形成の分子機構解析
【研究分野】人体病理学
【研究キーワード】
糖尿病 / 網膜症 / 血液網膜関門 / 低酸素 / claudin-5
【研究成果の概要】
糖尿病網膜症における血液網膜関門機能の破綻機序について、誘因として組織低酸素状態に注目するとともに、中枢神経系の血管内皮細胞間tight junctionを構成する分子であるclaudin-5の関与に焦点をあて解析を進めた。正常酸素濃度環境下のin vitro bEND.3細胞(マウス脳血管内皮細胞株)およびin vivoマウス網膜血管内皮細胞において細胞膜に限局した発現を示すclaudin-5が、低酸素濃度環境下〔1%O_2下24時間培養(in vitro);7-9%O_2下7日間飼育(in vivo)〕では細胞膜から消失するという興味深い知見を得た。そして、その低酸素状態でのclaudin-5発現変化が、in vitro系においてはbEND.3細胞層の電気抵抗値、in vivo系においては網膜血管の低分子量分子に対する透過性亢進と相関することが示され、低酸素状態がclaudin-5を標的として血液網膜関門機能を破綻させることが強く示唆された。続いて、この低酸素状態でのclaudin-5発現変化の分子機構の詳細につきin vitro系にて解析を行った。その結果、正常酸素濃度環境下に比して低酸素濃度環境下のbEND.3細胞ではclaudin-5蛋白質レベルが有意に低下するのに対し、claudin-5 mRNAレベルには有意な変化がみられないことが示された。さらに、種々の細胞内蛋白質の分解に関与するユビキチン-プロテアソーム系の阻害剤であるMG-132を用い解析を行ったところ、低酸素状態でのbEND.3細胞膜からのclaudin-5分子の消失が、MG-132の存在下では抑制され、低酸素状態におけるclaudin-5の発現変化にユビキチン-プロテアソーム系が関与する可能性が示唆された。
【研究代表者】