Xist RNA核内動態の生細胞解析
【研究キーワード】
クロマチン / エピジェネティクス / ライブイメージング / 長鎖ノンコーディングRNA / X染色体不活性化 / Xist / XCI / RNA / Live cell imaging / Chromatin
【研究成果の概要】
2021年度は、X染色体上の遺伝子領域について、クロマチン動態と遺伝子発現の関係に注目して研究を進めた。我々はこれまで、マウスX染色体特異的に存在する反復配列を見出し、この配列を標的とするgRNAと、蛍光タンパク質融合型dCas9(ヌクレアーゼ活性を欠損させたCas9)を発現させることで、X染色体上の遺伝子領域を可視化する系を構築している(Tjalsma S. et al. EMBO Rep 2021)。
本研究では、不活性X染色体をもつマウス胚性がん細胞MC12に、① Xist遺伝子近傍(3.5 kb下流)、② Dxz4遺伝子近傍、③ セントロメア近傍に対するgRNAと、dCas9-Haloを発現させて各遺伝子領域を生細胞内で可視化し、生細胞内動態(Mean square displacement: MSD)の計測を行った。gRNA/dCas9-Haloのシグナルは、それぞれの標的に対して細胞核内で2か所にfociとして観察され、同時に発現させたH3K27me3-mintbody(またはH4K20me1-mintbody)のシグナルと重なっているか否かにより、不活性X染色体上の遺伝子領域かどうかを判断した。約56ミリ秒間隔でgRNA/dCas9-Haloのタイムラプス観察を行い、fociの軌跡を解析することで、MSDを求め、時間間隔に対する変化をプロットした。フィッティングにより拡散係数と指数因子を求めたところ、3か所の遺伝子領域はいずれも不活性X染色体上では、動きがより拘束されていることが分かった。転写阻害薬triptolideを添加した場合は、不活性X染色体上のXist遺伝子近傍領域が動きやすくなったことから、Xist遺伝子の転写により動きが拘束されていることが示唆された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)