病態解析のための糖尿病シミュレーションモデルの構築
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
糖尿病 / 細胞シミュレーション / システム生物学 / インスリン / 尿素回路 / E-Cell / E-CELL / 肝臓 / バイオインフォマティクス / 膵β細胞
【研究成果の概要】
本年度は、糖尿病の病態形成において主要な役割を果たす肝臓のモデル化を行った。その際、肝細胞(単一細胞)のモデルを敷衍して、肝小葉、肝臓といった高次の構造をモデル化することを試みた。近年の生物学の知見の多くは分子・細胞レベルのものなので、これを利用しつつ、組織、器官レベルを理解する方法の開発が今後重要となる。肝臓は肝小葉の繰り返し構造であり、肝小葉は、門脈枝から中心静脈にかけての類洞(毛細血管)とそれに接する肝細胞索を基本単位としている。そこで、この基本単位を、単一肝細胞モデルを直列に並べ類洞モデルによって接続する単純なモデルで表現し、既存の知見と比較した。代謝経路としで知見が多くかつコンパクトな尿素回路をモデル対象とした。尿素回路に関連する酵素、代謝物質は肝小葉内で不均一に分布していることが知られているが、8コンパートメントの直列肝細胞モデルを主体とした我々のモデルは、既知の不均一性をよく再現した。このモデルには、既知の尿素回路関連酵素について知られている3種類の遺伝子発現勾配が含まれているが、この結果は、これらの遺伝子発現勾配で尿素回路の肝小葉内不均一性が説明可能であることを示唆している。
また、糖代謝全体を俯瞰するための単純な糖代謝モデルも構築した。インスリン分泌、インスリン動態、インスリンによる調節を含む糖代謝の各モデルを連結した10元程度の微分方程式モデルで、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の時系列のシミュレーションを試みた。その結果、健常者の検査結果を再現するパラメータセットを得ることができた。今後は、このモデルを用い(必要に応じて改善、拡張し)、種種の病型の糖尿病患者のOGTT結果の再現を試みていく予定である。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2002 - 2004
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)