細胞核形成における分子機構についての研究
【研究キーワード】
1分子観察 / 細胞核 / 分子間相互作用 / 1分子 / ラミン / 細胞 / 1分子分光 / ラミナ / ラミンA / クロマチン
【研究成果の概要】
近年、クライオ電子線トモグラフィーによる単粒子解析の急速な発展により、精製たんぱく質の原子モデルを得ることが可能になってきた。しかし、細胞の機能を理解するには、細胞外(in vitro)の情報だけでは不十分である。細胞内部では、多種多様なたんぱく質が混在し、相互作 用することで分子ネットワークをつくって機能を発現しているからである。つまり、細胞の機能を理解するには、細胞内部(in vivo)で「生体分子複合体がどこに局在し、どのような分子との相互作用があるか」を分子レベルでの観察が必要である。
生体分子は、分子間相互作用という近距離で働く力を利用して、大きさ数十ミクロンの細胞を形成している。しかし、細胞をナノメートルからミクロンまで継ぎ目なく観察できる顕微鏡が存在しないため、その詳細は良く分かっていない。そこで、研究代表者らは、このような観察できる「超流動ヘリウム蛍光顕微鏡」の開発をおこなってきた。昨年、この顕微鏡を用いて、ナノレベルの1分子イメージングに成功した。本研究では、超流動ヘリウム蛍光顕微鏡で細胞核を観察することで、体細胞分裂期に起こる形態変化の様子を分子レベルで観察し、細胞核形成の分子機構について研究することを目的とする。
本年度は、このような背景から、細胞内標識技術の開発をおこなった。その結果、細胞核表面にある核膜孔の蛍光標識に成功した。本課題で開発している色素分子は可視波長域の励起光を吸収し、光を吸収した置換基から近赤外蛍光性の置換基に励起エネルギー移動がおこり、蛍光が発せられる。よって、分子全体としては、可視吸収性かつ近赤外蛍光性になる。この分子を用いることにより、細胞自身の自家蛍光が低い近赤外波長領域の1分子観察が可能になり、細胞内でのナノレベル観察が現実味を帯びてきた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
工藤 史貴 | 東京工業大学 | 理学院 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
志見 剛 | 東京工業大学 | 科学技術創成研究院 | 特任准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2025-03-31
【配分額】17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)