硫黄架橋ルテニウム複核錯体の合成とそれらの錯体を用いた窒素固定の研究
【研究分野】無機化学
【研究キーワード】
ルテニウム / ジスルフィド架橋 / X線構造解析 / ジエチルエーテル
【研究成果の概要】
ジスルフィド架橋錯体[{RuCl(TMP)_2}_2(mu-Cl)_2(mu-S_2)](1)(TMP=P(OMe)_3)とnAg^+(n=1,2,4)を無水アセトニトリル(AN)中で反応させることによりClとANが置換し、さらに置換活性な錯体が生成することを単結晶X線構造解析とNMRにより明らかにした。特に注目すべき反応は4倍当量のAg^+と錯体1を反応させてエーテル拡散法により結晶化したとき、50℃では一電子還元された[{Ru(AN)_3(TMP)_2}_2(mu-S_2)]^<3+>(2)が生成するのに対して、0℃では架橋しているジスルフィド配位子にエーテル由来のCH_2CH_2CHOEtとCH_2CH_2CHOMeが結合した[{Ru(AN)_3(TMP)_2}_2(mu-S(H)CH_2CH_2CHO(mu-S)Me)]^<3+>と[{Ru(AN)_3(TMP)_2}_2(mu-S(H)CH_2CH_2CHO(mu-S)Me)]^<3+>が生成することをX線構造解析とNMRにより明らかにした。反応機構の詳細に関しては現在のところ明らかではないが、通常安定なエーテル分子の結合が非常に温和な条件下で活性化されたこと、活性化された分子が架橋している硫黄に結合したことが注目すべき結果である。また、錯体1に4AgCF_3SO_3をアセトニトリル中で反応させることにより[{Ru(AN)_3(TMP)_2}_2(mu-S_2)]^<4+>(3)が生成するが、エーテル拡散法により結晶化するとアセトニトリルが電子供与体として働き一電子還元された錯体2を与えることが明らかになった。この反応機構の詳細に関しては現在検討中である。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1993
【配分額】900千円 (直接経費: 900千円)