高圧温度ジャンプ法と計算機シミュレーションによるタンパク質フォールディング研究
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
フォールディング / 温度ジャンプ法 / 分子動力学 / スタフィロコッカル・ヌクレアーゼ / α-ラクトアルブミン / カルシウム結合リゾチーム / アンフォールディング / 変性 / 蛋白質フォールディング / 分子動力学シミュレーション / 高圧 / スタフィロコッカルヌクレアーゼ / リゾチーム
【研究成果の概要】
蛋白質フォールディング機構解明を目指して、以下の二点に関する研究を行った。(1)球状蛋白質の巻き戻り速度過程をマイクロ秒からミリ秒の時間域で追跡することを目的として、高圧条件下でのジュール熱方式温度ジャンプ装置を開発、装置の性能を改良、検討した。(2)蛋白質のフォールディング過程の原子レベルでの記述を目的として、分子動力学法による高温下(400〜600K)でのアンフォールディング・シミュレーションを行い、既知の実験結果と比較した。
以下の成果が得られた。
(1)今回開発の高圧温度ジャンプ装置は、紫外部の光吸収スペクトルと蛍光スペクトルによる検出が可能であり、25℃で1,800気圧、-4℃で1,200気圧が達成された。-4℃、1,200気圧では、多くの球状蛋白質は低温変性状態にあるので、温度ジャンプ法によりマイクロ秒時間域のフォールディング反応を追跡することが可能となった。
(2)温度ジャンプ測定のモデル蛋白質として用いる予定で、プロリンを含まない疑似野生型スタフィロコッカル・ヌクレアーゼの巻き戻り反応を調べた。その結果、この蛋白質にはプロリンがないにもかかわらず、変性状態からの反応経路が複数に分岐した並行フォールディング経路が存在することがわかった。これは、蛋白質のフォールディングに並行経路が存在することを明確に示した最初の例である。
(3)ヤギαLAの組換え体が真性体よりも不安定であり、100倍近く速くアンフォールディングすることが実験的にわかっているが、今回、この実験結果を分子動力学によるアンフォールディングシミュレーションを用いて再現することができた。組換え体に付加しているN末端のメチオニン残基により、常温においてもN末端近傍の揺らぎが著しく大きくなることがわかった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
新井 宗仁 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2000 - 2002
【配分額】14,700千円 (直接経費: 14,700千円)