分子標的薬の開発を目的としたRho paradoxの解明
【研究キーワード】
Rhoタンパク質 / small GTPase / がん / 分子標的薬 / がん細胞の浸潤 / がん細胞の転移 / Rho / ストレスファイバー
【研究成果の概要】
RAS遺伝子群は真核生物内で広く且つ高度に保存された低分子GTPaseであり、悪性度の高いがん腫において高頻度に変異が認められる。このRAS遺伝子ファミリー の一種であるRho遺伝子は細胞骨格の制御に中心的な役割を果たし、これの変異は細胞の形態形成や細胞内の物質輸送を制御することでがんの浸潤や転移を活性化させることがわかっている。近年、がん治療を目的としたRhoタンパク質の阻害薬の開発が望まれているが、世界規模での精力的な取り組みにも関わらず、有効な薬剤は見つかっていない。その理由の一つが、「Rhoタンパク質は活性化しても不活性化してもがんが悪性化するという」ユニークな動態を示すことにある。本研究は、がん細胞におけるRhoタンパク質のこの不可解な性質を明らかにすることにより、新規の抗がん剤(分子標的薬)の開発に寄与しようとするものである。 我々は、「機能欠失を起こしたRhoタンパク質シグナル伝達系の下流因子が、別のRhoタンパク質ファミリーのシグナル伝達経路に働きかけて機能を活性化する」 というモデルをたてて研究を進めている。このモデルを実証するため、様々なRhoタンパク質の変異体を作成し、解析を行ったところ、これまで報告のない一つの有力な変異遺伝子を取得した。この遺伝子変異をもつRhoタンパク質を培養細胞内に発現させたところ、細胞の異常な伸長を認めた。この変異はRhoの活性化型変異と推察されるが、これまでこのような形態変化を引き起こす遺伝子変異は知られていない。次に、この形態変化を引き起こすRhoタンパク質の機能を明らかにするため、変異型Rhoタンパク質の結合因子をの単離を試みた。その結果、野生型Rhoタンパク質に比べ、変異型Rhoタンパク質に強く結合する因子の候補を複数得た。現在、この因子について解析を進めているところである。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
吉田 知史 | 早稲田大学 | 国際学術院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)